コロナ禍の緊急事態宣言の余波を受けて、今年の5/31まで休館だった美術館(展覧会)は多かったと思いますが、清澄白河の東京都現代美術館もその一つ。
ここで開催中の『Tokyo Contemporary Art Award 2019-2021 受賞記念展』では私がとっても好きな版画家の風間サチコ氏が受賞者の一人として展示をされるそうなので、前々から行くつもりでした。
www.tokyocontemporaryartaward.jp
しかしこの休館で、おあずけ(´・ω・`)。状況次第で、下手するとこのまま会期終了になる?と冷や冷やしていたのですが、6/1よりめでたく(事前予約者向けのみ)再開したので、行ってきました☆.。.:*(嬉´Д`嬉).。.:*☆
【目次】
作家 風間サチコ とは
風間サチコ氏の経歴・受賞歴などについてはこちらを。
彼女の過去への膨大な調査に基づく批評精神溢れる作風は、レトロな昭和臭を感じさせる反面漫画的なポップさもあり、自分にはとても魅力的なものがあります。古典的な白黒の木版画で、こういうことをやるのが非常に面白い。その画面はアクが強いけれども、時に独自の美しさをたたえています。
今後もその動向が楽しみな作家さんの一人です。
疫病とかオリンピックとか
作家は近年、戦時中の日本やドイツに材をとって現代のグロテスクさを暴きだす傾向があるようで、今回は『ニーベルングの指輪』やトーマス・マン『魔の山』をモチーフとした作品が多く見られました。
『魔の山』(結核とかサナトリウムとかの話)とか、このコロナ禍を思うと、洒落にならない題材です。しかも『Tokyo Contemporary Art Award』では、受賞者への海外活動支援を実施しているようですが、風間さんはコロナ禍の影響により、2020年3月に予定されていたドイツ渡航を中止されたそうです(涙)
また、今回の展示で一番個人的に良かったと思う作品は、『ディスリンピック2680』。戦前日本の「国民優生法」と1940年に開催される予定だった"東京オリンピック"、そして2020年の東京オリンピックを絡ませた大作(2.4m×6.4m!)です。優生思想がもたらすディストピアの悪夢と美しさ。
私は風間氏の仕事に初めて接したのは、実はこの作品で、です。2018年に埼玉は東松山市の丸木美術館にて『風間サチコ展 ディスリンピア2680』が開催された時、はるばる作品を鑑賞しに行きました(遠かった…僻地)。
推測ですが、当時は(反骨で知られる)丸木美術館以外にこのような題材(強引に開催されようとしていた2020年オリンピックに喧嘩を売るような)の作品を展示できる場所が無かったのだと思います。それが、皆さんご存知の通りこのコロナ禍で、状況が変わっていますが…
素晴らしい展示内容でした
さて、『Tokyo Contemporary Art Award 2019-2021 受賞記念展』では、同じく受賞者の下道基行氏との実質二人展でした。正直、興味が有ったのは風間氏の作品の方だったので、感想はこちらに絞ります。
本展覧会は会場内での撮影が可能。近年は、日本の美術館でも撮影を許可するところが増えているのでしょうか?写してきた作品を、ここで一部ご紹介します。
『獄門核分裂235』は、3.11の震災と原発事故を受けての制作かと思いますが、何気に原子核の図を元にしていますね。「電子」に当たる「顔」の造形に既視感があったんですが…記憶を探ったら大海 赫先生の著書『メキメキえんぴつ』でした(勝手ながら)。
『人外交差点』(2013年)という作品は、渋谷駅前を題材にしていますが、ハチ公像が、ケルベロスになっていますよ…画面奥のパトカーのランプが人の目のように描かれているのも芸が細かい。
正直、こんな小さい画像では、風間作品の良さは伝わらないと思いますが、仕方がありません。本記事のリンク先の方が、作品画像が綺麗に大きく掲載されていると思います(苦笑)
作品制作の資料も充実
会場には、風間さんが制作の参考とした資料も沢山展示されていました。今見ると、相当アレな内容をうかがわせるものも。でも当時は真剣に作られていたのかな…
ただ置いてあるだけで、その発するメッセージの強さよ。
それでは、また!