青海のブログ

本や映画、展覧会の記録と感想等。時々、発達障害について。

王昭君 考

九州南部は、もう梅雨に突入だとか、止めて欲しいです…

さて今回は、歴史と美女についてちょろっとと語ります。

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赤い雛芥子は、"虞美人"草でした


以前、某所で王昭君について話させていただいたのですが、大体その再掲です。

古代中国四大美女の一人で、非中華の遊牧民族匈奴の呼韓邪単于に嫁がされた前漢の時代の絶世の美女、王昭君のことです(単于匈奴の君主のこと)。

王昭君についてご存知ない方は、こちらをお読みください。

ja.wikipedia.org

 

日本のお花だと、「王昭君」は、椿や花菖蒲にそういう名のものがあるようですねー。

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これは薔薇

 

王昭君の話は、史実ではどうだったのでしょうか?今に伝わる話は、かなり中華世界の価値観というフィルターがかかっているのではと疑っています。とにかく悲劇のヒロイン扱い、伝承によっては、義理の息子と再婚するのを拒否して自害しただの、悲惨な末路のイメージが強いです。

 

何より漢族の中華思想自分達の国や文化が一番!卑しい匈奴の土地に嫁ぐなんてとんでも無い不幸に決まっている!夫亡き後その息子へ嫁ぐなんて、なんて野蛮!ケダモノ並み!絶世の美女がそんな目にあうのは壮大な悲劇!全米が泣いた!…というような色眼鏡を感じます。

 

大体周りの異民族には『匈奴』や『鮮卑』、『夷・戎・蛮・狄』とかネガティブな字を当てた蔑称で蔑んできた"華人"(自分達は"華人"と名乗る!)の言う事ですから…

中国歴代王朝は、実際は、非中華世界の遊牧民系勢力による割合が高い、という説もありますけど。

 

未読ですが王昭君を書いた小説に、窮屈な漢の宮廷から解放されて、遊牧民の処で、ノビノビと楽しく暮した、と言うものもあるみたいですよ。

王昭君 (講談社文庫)

王昭君 (講談社文庫)

 

 
上記のように、遊牧民族では、レビラト婚という風習を持つところが多いです。寡婦が亡き夫の兄弟と結婚する慣習ですが(『乙嫁語り』にもありましたね)、夫亡き後、義理の息子と再婚することもあるようです。

レビラト婚 - Wikipedia


匈奴にもその風習はあるので、王昭君もそれに従っただけだでしょう。

でもこれが、儒教の価値観では義理でも兄弟の妻(もしくは子の妻)とは近親相姦になる!いかん!と非常にタブーとされています。何て卑しい!と大変この風習を嫌ったそうです。

乙嫁語り 3巻 (HARTA COMIX)

乙嫁語り 3巻 (HARTA COMIX)

 

 
実際のところは、分からないですよね。

 

異文化で苦労はあったかと思います。食べ物や言葉も違うし、匈奴の閼氏(単于の妻)なら、乗馬や家畜の扱いに通じてないと、色々とやりにくいでしょうし。

 

でも、宮中での大勢の女官達の内の1人でいるよりは、嫁ぎ先で大切にされて、幸せだったかもしれません。

…ところで、この中華思想、現在進行形じゃないでしょうか(;^ω^)

 

そんな中華思想に基づく史観に対して、漫画家の青木朋先生が『天空の玉座』や現在連載中の『天上恋歌』にて、非中華民族の魅力を描いておられて、楽しく読ませていただいております。

天空の玉座 6 (ボニータ・コミックス)

天空の玉座 6 (ボニータ・コミックス)

 

 

 

 


『天上恋歌』は、かなりヤバい(実際の)時代をテーマにして描かれているので、どうなるか、かなりワクワクして読んでいます(別にまわし者じゃあないですよ?)

それでは、また!

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雷雨(もう雷が…)後の虹