青海のブログ

本や映画、展覧会の記録と感想等。時々、発達障害について。

『天上恋歌 金の皇女と火の薬師』3巻 感想

北宋時代最高の芸術家と言われた徽宗の治世、宋の宮廷に仕える花火職人に恋をした金の皇女、アイラのお話も3巻目です。
※この巻の感想はだいぶ辛口になってしまうため、ブログへ書くのを迷っていました。

 

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カバー下もとっても美麗

 

 

…まずは一言。
陰謀企てる手口がザル過ぎる。そして、それに備える金の警備体制が更にザル過ぎ!


【目次】

 

※以下、内容について盛大にネタバレしています

細かいところではワクワクした

しっかりと面白いところもありました。

オリブ皇子の「神箭手(メルゲン@シュトヘル)」ぶりにキャーとなったり、この時代に兵器へと本格利用され始めた火薬の話や、宮廷人の風流命っぷりや、皇子皇女達の間の上下関係やら、細かいレベルの話では、色々ワクワクしていたのですが…

 

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Paul BarlowによるPixabayからの画像

 

引っかかるところ多し

色々納得できない描写が多い巻でもありました。青木先生は、歴史がお好きで、ご自分の御興味のある歴史の楽しみ方をシェアしてくださるところは好きです。しかし、政治・外交面の話はあまり得意ではないかもしれない…と思いました。


それ以外にも、徽宗の皇子の1人、鄆(うん)王の鹿の絵のエピソードが納得いきませんでした。

 

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congerdesignによるPixabayからの画像

 

日本の平安貴族もそうですが、風雅に命を懸けているであろう宮廷人が、あんな初歩的な間違いを犯すとはとても思えません。ましてや皇子の中でも高位な鄆王のこと、恥をかかさないように周りがまず気が付くと思うのです。

 

国家に友人なし

アイラ、責任感があって、いい子だと思っていましたが、だんだんイヤーな既視感(著者の前作『天空の玉座』のヒロイン珊瑚みたいな)を感じさせられるキャラクターに…

刺客の危険があるのにお兄さん達の観光優先で予定をそのまま続行したり(それどころじゃないだろ‼)、観劇中、突然の移動にホイホイついていってしまったり。危機管理能力ゼロです。


結局、死にかけて「故郷に帰るか」と勧められているのに「(国家間の友好に貢献するため)自分の使命を果たしたい」と宋に残ることを選択したり。兄さんたちも「それでこそアイラだ」とか、言っちゃって、おーい、大丈夫か~?という気分です。

いくら「族長の娘」気分が抜けないとはいえ、アイラは公人なんですよ。彼女が狙われる、ということはもう、宋と金という国家の外交問題になる。

個人的に付き合うなら、アイラのような人はとても良い相手でしょう。でも、自分は金という国を背負って宋に来ているという自覚が無さすぎる。

 

そもそも、金が生き残りを賭けて宋と同盟を結び、その尖兵として、アイラは来ているのではないですか?政治のただ中に彼女はいるのです。

 

フランス大統領だったシャルル・ド・ゴール

「国家に友人なし、ただ権益あるのみ(No nation has friends only interests.)」

という言葉を注入してやりたいです。

 

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シャルル・ド・ゴールWikipediaより引用)

 

毛沢東「政治は血を流さない戦争であり、戦争は血を流す政治である」という言葉もついでに。

 

オリブ兄さんもなあ、火薬の威力を目の当たりにして、あんなあっさり引き下がるなんて。軍人であり、金の皇子である彼の立場なら、まずこれだけのテクノロジーを軍事面で取り込めないか考えるでしょう。ただでさえ遼の脅威にさらされている自国の権益を考える筈です。その辺のえげつなさが感じられない。

宋と日本と火薬の話

作中の謎の文書、記述されている用語をググったら、どうやら火薬関係のものらしいです。「北帝玄珠」は硝石のことらしいですし。ただ、「白虎」は(おそらく)石膏のことのようですが、火薬とは関係あるのかな…?「陽侯」はちょっと分かりませんでした。

 

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Kevin PhillipsによるPixabayからの画像

 

これをきっかけに、ちょっと調べてみたら、火薬をめぐる宋と日本との関係が面白くて、こんな歴史があったのかとワクワクしてしまいました。

 

硝石と言えば、日本では五箇山で製造していたと聞いたことがあります(人の尿を元に)。それに、火薬の原料の一つである硫黄は、火山国である日本では、昔から産出していたとか。で、日宋貿易では、硫黄は日本の重要な輸出品だったそうです。

 

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火山のある地域では、硫黄が採れます

 

現在の中華人民共和国内なら、自然硫黄が産出する場所があるのに、当時宋はわざわざ海を越えて取り寄せることをしていました。

何故かって?宋代の中国では、その産地である火山地帯は遼・金・西夏・大理等の他国の領土だったから。それなのに火薬の兵器利用のための国内需要は高まるばかり。しかも時代が進むと…(ネタバレにつながるので今は伏せます)。

 

パクツイされたその後

皆さんどうでも良いかと思いますが、以前、私がAmazonへあげた『天上恋歌』2巻のレビューを自分の感想のようにツイートしたおバカさんがいました。

 

aoumiwatatsumi.hatenablog.com

 

その後の経過としましては、twitter著作権侵害されたと訴えてはおきました。このために、やりたくもないtwitterを始める羽目になりましたよ…

でも、申請してから2ヵ月もたつのに、何も動きがありません(こんな案件、腐る程あるでしょうし)もう、本人へ突撃して、件のツイートを削除してもらいましょうか…即ブロックされて終わりのような。


しかし、私みたいなただの人でもパクられたら嫌なのに、プロのライターさんとかはもっとパクられて嫌な想いをされているようで、大変だな…と思いました。

 

つまらない話でごめんなさい。

 

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中国では牡丹は愛されています

 

それでは、また!