今年閉館となる予定の岩波ホールで開催の『ジョージア映画祭2022』の上映作品を(一部)観てきました。感想は、後日…
さて、今月1/22(土)から東京都渋谷公園通りギャラリーにて開催されている『Museum of Mom's Art ニッポン国おかんアート村』展を初日に観てきましたので、遅ればせながら感想をあげます。
今回、長い & 時々写真がボケボケですが、よろしかったらお付き合いください。
【目次】
おかんアートとは
↑「おかんアート」については上記をご参照ください。
例えばこのような手芸品です。
おかんアートとは、文字どおり「おかんがつくるアート」のこと。(中略)見るひとを困惑させ、おしゃれ空間を一発で破壊し、勢いと熱さだけはあふれるほどあり、プロのアート作品にはもちろん、いまや「インサイダー」になりつつあるアウトサイダー・アートやアール・ブリュットにすら存在しない、おかん独自の破壊力。単一の価値観に収まりきらないことが現代美術の特質であるならば、おかんアートはもっとも無害に見えて、もっとも危険なアートフォームなのかもしれない。
(展覧会のキュレーターステイトメント(都築響一氏) より引用)
最近、自分の近所では見かけなくなっていますが、商店街や銀行のショウウィンドウやクリニックの待合室等ではおなじみでした。当たり前すぎて意識していなかったですが、皆さんも覚えがあるのではないかと思います。
貰って迷惑な手作り品
子供の頃は全然良いとは思わず、実際おしゃれなカフェ等には絶対に置けないダサいものですが、今となっては懐かしさを喚起します。
五円玉を集めたものを紐でくくって兜とか船とかの置物を作ったものを見たことありますか?
吉本ばななさんの小説『海のふた』でこの5円玉細工が出てくるエピソードがあり、短いながらおかんアートあるあるな描写で印象的です。生まれ育った伊豆の海辺の町で、カキ氷屋(!)を開く主人公の「まりちゃん」が、お店の大家さんのおばあちゃんの”五円玉でつくった人形や絵をそこで売ってくれ”と頼まれてしまうのです(笑)
…角がたたないように断るのは大変だった。一応検討しようと思って見せてもらったら、きらきらと光る帆掛け船だとか、だるまだとかを次々見せられた。地元だと、案外そういうことこそがむつかしい。結局、その家のお嫁さんの「若い人が自分の感じでやりたいんだからね」という必死の説得で、その問題は何とかなったが、縁起物だし記念にと、だるまをひとつ持たされた。
(吉本ばなな『海のふた』より引用)
まりちゃんは”「これって、ばらせば換金できるんだろうか……」”とたまに思いながら自室に飾っている…というところでこの話は終わりですが、おかんアートの「飾る場所に困る」「作りすぎて置き場がなくなり、人への配布をスタートする」「置いた瞬間、どんなにおしゃれな部屋ももっさりさせる破壊力大」な特徴が良く伝わってきます。
展覧会について
前置きが長くなりました。以下展覧会についてです。
初日に、東京都渋谷公園通りギャラリーで開幕したところへ行くことができました。
コロナ禍の感染拡大で、開催が危ぶまれていたそうですが、関係者の尽力で、なんとか開催にこぎつけたそうです。~ 4月10日(日)まで開催予定ですが、まだまだ予断を許さない状勢ですので、ご興味ある方は出来るだけ早く行かれた方が良いと思います。
入口で検温・アルコール消毒をして、人数制限しながらの入場。展示室は大きく3つにわかれており、1室目は柱を中心に何段にもわたって飾られたおかんアートが圧巻。ノスタルジーを感じながら、鑑賞です。
おかんアートの特徴の一つとして「地域性がない」というものがあるそうです。日本全国、どこでおかんが作っても、同じようなものが出来る。その中でも、個人差があって、そこがまた面白いそうです。
今回は、キュレーションを務めた神戸を拠点に活動する「下町レトロに首っ丈の会」によるおかんアートのコレクションが中心なので、どうしても神戸辺りの作家たちの作品が中心となります。が、自分の地元(関東)でも見覚えがある作品ばかりでした。
これにやはりキュレーションを務める都築響一氏が一押しのちょっとおかんアートとは異なる作家も加わっているのですが、それはまた後述いたします。
2室目に移動。こちらも、懐かしの膨大なおかんアートの数々、壁面には大きく引き伸ばされた作家たちの写真も展示されています。
写真が下手で、ボケているものもありますが、済みません。
おかんは、物を捨てない人が多いので、こうなる。自分の母も捨てない(捨てられない)人です。
twitterでもつぶやきましたが、おかんアートって、尖った人を傷つけるようなところは無いのですが、妙に狂気を感じさせる作品が見られるのですよね。狂気というか、混沌というべきか。
↓下の陶芸作品なんて、塔本シスコさんの作品に通じるものを感じます。
シスコさんの作品世界も、おかんアートに連なるものなのか。
「おかんアートの作り方」まで掲示されています!
昭和の当時、手芸店等で手に入ったキット、本も展示。
おかん宇宙のはぐれ星
3番目の展示室は、キュレーションを務めた都築響一氏が推している3人の作家さんたちの展示が。おかんアートのくくりからちょっと外れた?でも魅力的な作品世界を見せてくれます。
まずは映画館・早稲田松竹の”お掃除担当”として働いておられた荻野ユキ子さん(現在は介護施設に入居)が廃材を使って作っていたほっこりアート。
箱庭的な世界で癒されます。今でも早稲田松竹に彼女の作品は飾られているそうです。
荻野ユキ子さんについては、『独居老人スタイル』で読むことができますし、恵比寿のNADiff Galleryで、『独居老人スタイル』展が開催された時に既に作品を実際にいくつか拝見しております。
それから、新聞紙でバッグや巨大なコラージュを制作されている嶋暎子さん。
写真に撮らなかったのですが(汗)、壁面に展?示の新聞紙を使った巨大なコラージュ作品も展示されていました(むしろこちらが主役?)
↓以下リンク先の経歴を見ても、おかんアートというカテゴリーに入りきらない方のような印象を受けます。
最後に障害者施設に通い、広告チラシを折って大量にゴミ箱を作っていらっしゃる野村知広さん。
…え?この方男性みたいだし、”おかん”じゃあないのでは?どちらかというとアールブリュットでは?ともやもやしてしまいました。
この箱、私も良く作ったな~と懐かしい気持ちに。
以上となります。
おかんの辞書に「断捨離」はないのだなあ、としみじみ。
みんなが知っているのに、従来誰もまともに取り上げてこなかったおかんアート。
この展覧会の「おかん」「おかんアート」というくくり方に、SNS上で賛否両論だったようですが、それもこうやって都築さんたちが取り上げて、提示してみたからこそではないかな、と思います。これからですよ。
↓地元の商店街で見かけた、おかんアートです。
それでは、また!