こんばんは。モルカーを見るたびにペルーのクイ(食用モルモット)の丸焼きを思い浮かべる今日この頃です。
さて、世田谷美術館にて開催中の展覧会、『塔本シスコ展 シスコ・パラダイス かかずにはいられない! 人生絵日記』を見て来たので感想です(しかし遠かった…)。
【目次】
世田谷は異界
私にとっての東京は、"右半分"止まり。世田谷なんて、上級国民達が住む異界、(物理的にも心理的にも)遥か遠い国にすぎません。そんなエリアでちょっと良さそうな展覧会があると聞いても、通常は「パリで開催中」と同レベルで「行けないから"無"と同じだね」で終わっていました。
それが、塔本シスコさんの展覧会をやると知ったとたん、脊髄反射でチケットを申し込んでいました。シスコ、恐るべし。
元々、彼女の画業は少しばかり存じ上げていましたが、直に作品を見るのは初めてです。
塔本シスコとは
JR地下鉄バス徒歩…とはるばる世田谷・砧公園内の世田谷美術館へ到着。
会場に入ると、シスコさんのマネキン?が。顔は看板、着物はシスコさんが柄を描いたものを着付けています。
塔本シスコ(1913〜2005)さんは、熊本県生まれ。50代から独学で油絵を始め、逝去までの約40年間にわたって創作を続けた日本の素朴派の画家として知られています。
シスコさんは正規の美術教育をほとんど受けていません。
幼い頃は絵が好きだったようですが、(養子に出されていた)家の事情で、小学校中退、奉公に出され、結婚・出産…と絵とほぼ無縁の生活をされていたようですが、夫の事故死やご自身の脳溢血等苦労が続いた後、画家を目指していたご子息の画材を使って、見よう見まねで創作を始められたようです。
お母さんの絵を見て、この画業を守ろうと決意した息子さんや、サポートしたご家族の方々の尽力が素晴らしいです。良く芽を摘まずにいてくれた!!と思います。
世田谷美術館は開館当初から素朴派、アウトサイダーアートと言われるジャンルの作品の収集や、展示に努めてきたので、ここでの開催は分かる気がします。
こういう風に見えている
展覧会、「行って良かった」これに尽きます。
上の絵のように、背景のモブ達の動きを見ているだけで楽しいです(皆バンザイしている?)。
上の絵なんて、キャプション読むと、幼少時のシスコさんと妹達、それにシスコさんの孫達が「子供達」として一緒に描かれているんですよ。描き手の中でのリアリティ。
子供の描く絵みたいだな、いや子供の絵そのものだなと思いました。決して奇をてらっているのではなく、「本当にこのように見えている」「自分の知っている情報を伝えようとしている」結果がこのような形になったような。
上は、今の天皇皇后陛下ご夫妻の「結婚の儀(1993年)」に際し描かれた絵ですが、タイトルが『絵を描く私』で、画中に「シスコ80才ナリ」と書き込みが…
描かれた人物はどうみても少女。ちょっとズーズーしくないですか?(笑)
でも、これが彼女なりのリアリズムなのかもしれません。いくつになっても中身は少女?
結構サイケデリックな絵が見られますが、これも彼女のリアルなのでしょうね。
↑ 愛猫の絵です…
下の絵(額縁は手作り?)を見ても猫の"たま"をきちんと描写している(笑)
民芸品のような楽しさ
シスコさんの作品は、絵画だけではありません。
手描きの着物も、そして帯にも絵を描いています。
↑ この帯の絵なんて、メキシコのお土産だと聞いたら、信じてしまいそう。
陶の作品も良かったです。
謎(これは一体何?)
シスコさんの絵に描かれているものは、奇をてらってのものではなく、彼女なりのリアルに基づいていると述べました。
しかし…「じゃあこれは何?」と言いたくなる謎描写も見られます。
例えば、↓下の桜島を描いた絵。
空を覆う「◎」に「星型」。一体これらは何なんだと思います。画面下の反物を扱う娘さん達も謎です。お仕事されているにしては、服装が仕事着ではないし???
また、『春の庭』はかなり不可思議な作品です。画面下部に描かれた謎の人物達は一体???
凄く元気を貰える展覧会でした。
…やっぱり遠かった!!ですけれど。
~11月7日(日)まで(その後熊本市現代美術館、岐阜県美術館、滋賀県立美術館へ巡回予定)
それでは、また!