青海のブログ

本や映画、展覧会の記録と感想等。時々、発達障害について。

「エルマーのぼうけん」展 感想

「暑さも寒さも彼岸まで」…ええ、9月のお彼岸まで後7週間はあります…_:(´ཀ`」∠):_

 

さて、先日、はるばる立川のPLAY! MUSEUMへ「エルマーのぼうけん」展を観に行ってきたので、その記録をアップします。

 

立川、遠かったです

 

play2020.jp

 

【目次】

 

エルマーのぼうけん とは

「エルマーのぼうけん」は、どうぶつ島にとらわれたりゅうの子を助けに行く、9才の男の子エルマーの冒険物語です。1948年から51年にかけて、『エルマーのぼうけん』『エルマーとりゅう』『エルマーと16ぴきのりゅう』(文:ルース・S・ガネット、挿絵:義理の母ルース・C・ガネット 日本語版はいずれも福音館書店刊)の3冊の物語がアメリカで出版され、日本では累計700万部を超すベストセラーとして広く愛されています。

少年エルマーは、りゅうの子やその家族を助けるために、お父さんとお母さんと暮らす家を飛び出し冒険の旅に出ます。恐ろしい動物たち、不思議な病気、そして大人の人間たちという困難に出遭うたびに、エルマーは対立することなく受け止めて、自分の手元の道具や知恵を使い、機転をきかせて乗り越えていきます。自分と異なる他者を受け入れ、争わず知恵を使ってトラブルを 解決する姿勢は、作者ガネットが物語で一貫して伝える子どものみならず、大人にも向けられたメッセージです。

(PLAY! MUSEUM「エルマーのぼうけん」展 公式サイトより引用)

 

エルマーシリーズは、3部作なんですよね。私は、幼稚園の時に読み聞かせで出会って、本を購入して貰い、家でも愛読していました。

 

入口に「りゅう(名前はボリス)」の像が

 

この年になって、展覧会が日本で開かれるなんて、感涙です。会場では、著者のガネットさんの義母が描いたという挿絵原画が沢山拝見することができ、また感激。

絵は、モノクロのものは、鉛筆で描かれているようです。

 

会場には、拡大された挿絵がパネルにもなって展示

『えるまーのぼうけん』のワンシーン

 

『エルマーのぼうけん』

今はもう、手元に本が無いから展覧会で少々思い出した内容に言及すると、

一作目『エルマーのぼうけん』はアメリカのかれき町に住む、冒険に憧れる少年エルマーが拾った野良猫(実は凄い旅行家だった)から、どうぶつ島にとらわれた”りゅう”(伝説のドラゴンと違い、とても穏やかな生き物。空を飛べる。名前はボリス)のことを聞かされ、単身密航して助けにいく…という冒険譚です。

※何気に、猫をはじめとする動物達との会話が通じる設定です。

 

エルマーと野良猫との出会い

 

 

このエルマー、とても勇気があり機転がきく少年(まだ9歳!)で、前述のとおり親にも黙って、独りで色々な装備を用意して、荷物のふりをしてある船に乗り込み(よくばれなかったな)、どうぶつ島に上陸します。

 

どうぶつ島へ上陸

 

どうぶつ島では、捕えられたりゅうの子は、島の中に流れる大きな河のほとりに繋がれて、河を渡りたい動物達の「乗り物」として使われています。河にはワニがいるから、ワニに渡して貰えば良いのに。信用できない存在なのかな?

 

会場の「ワニ」の上には、来客は乗ることができます

 

出会う様々な動物達は、人間に対して、とてもじゃないけれど友好的な存在ではありません。そんな動物達をエルマーは時にこっそりやり過ごし、遭遇してしまった場合(大抵「食ってやる」「殺す」的な態度の奴らばかり)は、持参のキャンデーやチューインガム、虫メガネ、リボン…なんて小道具を使って、機転をきかせて乗り越えてしまいます。どのように乗り越えたかは、本書を読んでみてください。大抵の図書館にはあるし、すぐ読み終えることができる長さです。

 

子ザル達にノミをとらせるゴリラ

 

しかし、汚れた大人になってから振り返ると、エルマーってまだ10歳にもならないのに、末恐ろしい逸材です。独断で密航はするわ、人間なんていない未知の島で命の危険にさらされ続けながら、その都度臨機応変に、手持ちの小道具を使って切り抜ける、奸智にたけた所と言い、そのネゴシエーションスキルと言い、将来はCIA、FBIのエージェントとか外交官に就職して、その能力をいかんなく発揮していたのでは…?と勘繰りたくなります。

 

 

『エルマーとりゅう』

続く二作目『エルマーとりゅう』の内容は、そんなに「冒険」という内容ではなかったです。後述のとおり、「宝探し」的な楽しみがある感じ。

前作で、どうぶつ島から、無事りゅうの子を救い出し、その背に乗って辛くも脱出したエルマー。生家のあるかれき町まで飛んでいくつもりが、あいにくと、帰途の海で嵐に会い、ある中州へやっとのことでたどり着きます。

 

嵐にあうエルマーとりゅう

 

 

中州では、りゅうが立ったまま、エルマーを乗せて、二人(?)とも眠りにつきます。翌朝、起きた時に、りゅうが身体がこわばっちゃって、首とか上手く回せなくなった、という展開を今でも憶えています。

この中州のそばに、人間から逃げてきたカナリヤ達が住む、カナリヤ島がありました。ここで、昔エルマーが飼っていた(そして逃げ去った)カナリヤの"フルート"と再会します(都合が良い展開…)。

 

左がカナリヤ島、右が中州

 

エルマーは、フルートを通じてカナリヤ達の王”カン11世”を紹介されます。そして、昔々、この島に人間たちが埋めた、「謎の箱」の存在を教わります。

 

カナリヤの王妃(左)とフルート

 

結局、なんだかんだで、りゅうと協力したエルマーが箱を掘り出すんですよね、そして中には、金貨や純銀のハーモニカ、金の時計、その他食器のセット等が入っていたことが判明します。

 

りゅうのしっぽをひっかけて財宝?を引っ張り上げる

エルマーがハーモニカ演奏する中で踊るカナリヤ達

これは本書の表紙絵かな?

 

そうして、改めてエルマーの元の住処であるかれき町へりゅうに送ってもらうのですが、竜の存在をばれないように、近くでおろしてもらいます。

 

これが当時のアメリカの沖仲士(左の2人)?

 

そうして、エルマーは懐かしの自宅へ帰還、両親へ、戦利品(金貨とか)をお土産に渡します。

 

唐突な帰宅シーン

 

このあたり、子供心にも「この展開、苦しい…」と思っていました。

まともな親なら、心配するし、捜索願出しているでしょう?息子が長期間黙って不在していて、出処の分からない金貨とか持ち帰ったら、おかしいと思うだろうし。

 

古き良きアメリカの家庭の図?

息子、どうしてこんな金目のものを…


なんだかんだで、エルマーのぼうけんはひとまず終わり。りゅうともお別れ…の筈でしたが…

 

『エルマーと16ぴきのりゅう』

三作目『エルマーと16ぴきのりゅう』が本シリーズの完結編となります。

 

 

 

元の生活に戻ったエルマーが、ある日元野良猫(エルマーの家の子になった)から注進を受けます。

 

前作でお別れして、実家に帰った筈のりゅう(ここから「ボリス」という名であることが分かります)が近所に潜んで、エルマーに助けを求めているとのことです。

 

夜空を飛ぶボリス

 

ボリス達、りゅうの家族が住んでいるのは、とんがり山脈を越えたごびごび砂漠の中にある、そらいろ高原。砂漠では通常、砂嵐が吹き荒れて、人間達を阻んでいるのですが、たまたまそれが無かったために人間達が山狩りをして、ボリスの家族を洞窟に追い込んでいる絶体絶命な状況だとのこと。

 

左側がごびごび砂漠、そしてそらいろ高原

そらいろ高原にて、りゅうを追い込む人間達

 

その応援要請を受けて、作戦を立てたエルマーは再度冒険にその身を投じます。必要な道具を買い込み、ボリスの背に乗って一路そらいろ高原へ。

 

エルマーとボリスがどのようにりゅうの家族を助けたか…知りたい方は、是非本書を読んでみてください(あっと言う間に読めます ネタバレですが、作戦は成功します)。

しかし、エルマー、今回は沢山の大人達を相手取って、奸計をたてて困難なミッションを成功させるとは…末恐ろしい子…!(白目)

 

綺麗な表紙絵原画

 

余談ですが、ボリスが語る思い出話で、りゅうは平和を愛する生き物だということ、西洋の騎士がドラゴン(りゅうの眷属)達を討伐したせいで、りゅうはボリス達家族が最後となってしまった…というくだりは胸が痛みます。

 

りゅうの父さんが語る昔話

 

…さて、エルマーとボリス(りゅう)との交流も、これが本当に最後の最後。別れても、ズッ友だよ、と抱擁する二人(?)

 

今生の別れ

 

こうして、このエルマー3部作は幕を下ろします。

 

展覧会の最後に

エルマーシリーズのガネットさんについても紹介されていました。

 

作者自ら描いた、”島”のラフスケッチ

 

読んではないですが、ガネットさんはこの3作を世に出した後は、ユダヤ人のご主人との間に生まれた7人姉妹の母として(!)それ以上創作はされなかったそうです。

「仕方なく」ではなく、母としての暮らしを楽しまれていたようです。

 

作者の手になるフェルトのりゅう

 

会場最後の方に展示されていた、作者作のりゅうの手作りぬいぐるみ(手足が可動する)も胸熱。イラスト担当の義母に、りゅうがどのようにポーズをとるか参考にしてもらうために作られたそうです。

 

りゅうのぬいぐるみ

 

暑い中、はるばる足を運んだ甲斐がありました。

 

会場に置かれていた3部作…懐かしい

 

それでは、また!