青海のブログ

本や映画、展覧会の記録と感想等。時々、発達障害について。

『木彫り熊の申し子 藤戸 竹喜 アイヌであればこそ』展 感想

すっかり暑い、夏真っ盛りです(関東)

さて、東京ステーションギャラリー にて昨日から始まった展覧会、『木彫り熊の申し子 藤戸 竹喜 アイヌであればこそ』に行ってきましたので、その記録と感想です。

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ギャラリー入り口前


藤戸 竹喜氏(ふじとたけき・1934年-2018年)は、北海道美幌町アイヌ民族の両親の元に生まれ、旭川市で育った木彫家です。

木彫り熊の職人だった父親の下で12歳の頃から熊彫りを始めて、後に阿寒湖畔に移り住んで才能を発揮されていき、お土産用彫像に留まらない多彩な表現の作品を残されました。中央の美術界とは距離を置いていたようです。ようするに、アーティストというよりは、アルチザン、民芸作家といって良いのでしょうか?昔は、北海道土産の定番でしたよね、木彫りの熊。

 

けど、民芸だとか工芸だとかファインアートとかにこだわらず、、その表現を深化されていったように見えます。

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展覧会ポスター

 

大体、その作品は着彩されない生地そのままで、モチーフは熊に限らず、狼、狐、兎、犬、鹿、鷲(鷹だったかな?)、鮭、甲殻類、クジラや鮫等、そして人間(特に自分のルーツであるアイヌの彫像や狩りをしている群像等)をモチーフにしたものと多彩な作品群でした。他に依頼されての仏像、思ったより大がかりな大作、一つのテーマでの連作彫刻、一木からでなく、パーツを組み合わせての細工物等、多種多様な作品群で、面白かったです。


感心したのは、ヒグマと白熊と、それぞれ別個に木彫作品があったのですが、着彩していない(どちらも生地そのまま)のにちゃんと違いが分かるのですよ。一応展示の名札でも判別はできるのですが。ヒグマをそのまま白くすれば白熊になる訳ではないのです。それで顔つき、耳の形、体形それぞれの違いをとらえて、制作されている。

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展覧会ポスター2

 

終盤の、連作作品(アイヌの子が親とはぐれて狼に育てらるストーリー)は、北海道の狼の絶滅と、侵略され迫害され和人(いわゆる日本人のこと)に"同化"させられていったアイヌの運命を重ねているようで、胸が痛みました。

自分が人間だと知ったアイヌの少年は、「私は狼だ」と人間の世界に戻らず、最後の狼となった"姉"の狼と共に「カムイミンタラ」へ旅立つ…そして1900年、北海道の狼は絶滅となった、で終わります。あれ、「カムイミンタラ」だと記憶していますが、これは、アイヌ語で"カムイ・ミンタラ=神・庭"の意味で、ヒグマ(キムンカムイ)の生息地、大雪山のことだそうです。

※↑上記、記憶違いかも。彼らが去ったのは「カムイモシリ(神の国)」の間違いだったらごめんなさい。

 

アトリエの写真を見ると、写っている木製の家具も、竹喜さんが手ずから手掛けたように見えます(表面のレリーフとかね)。この辺の説明もあったら嬉しかったのですが。

 

後、本展覧会では、同じアイヌ出身の彫刻家、砂澤ビッキ氏との交遊にも言及されていたのが嬉しかったです。2017年に神奈川県立近代美術館 葉山にて、砂澤ビッキ展を鑑賞しましたが、これも良かったので。

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はるばる葉山まで行きました


藤戸 竹喜 展 は 会期が9月26日(日)まで。
(休館:7/19(月)、8/10(火)、8/16(月)、8/23(月)、9/6(月)、9/13(月))

 

それでは、また!