青海のブログ

本や映画、展覧会の記録と感想等。時々、発達障害について。

『秋の旅』萩尾 望都 著 感想

今連載中の漫画では、トマトスープ先生のモンゴル後宮『天幕のジャードゥーガル』が一番楽しみです。絵もシチュエーションも、ストーリーも…イイ!!

さて、萩尾 望都先生の短編漫画、『秋の旅』の感想です。『11月のギムナジウム』(小学館文庫)に収録されていますが、他の収録作がそれ程印象に残らなかったので、この作品だけ取り上げます。

 

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表題作も個人的にはそれ程…でした

評価:★★★★★(5つ★満点))

たった24ページの長さですが、古いヨーロッパ映画を見ているかのようで、忘れがたい余韻を残す傑作です。

舞台はドイツ?で、主人公ヨハンがある秋の日に、憧れの作家であるモリッツ・クラインを訪ねるが…というストーリーです。

 

地味に凄いと思ったのは、画面の中の空気がどこを見ても"動いている"印象を受けるところです。ヨハンのネクタイ(スカーフ?)やルイーゼの髪のゆるやかな曲線の描写で画面が硬直せず、生きた空気が流れているように見えます。

それと、終盤のシーンが見事。読んでいて、鉄道の「ガタンガタン」という音や揺れを実際に体感するかのように感じました。光や影の感じもちゃんと秋のものとして描き切っておられます(最もドイツの秋がどんなだか知らないので、日本の秋が基準となっているかもしれません(;´Д`))

 

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ドイツの秋はとても寒そう

 

他の収録作に関しては、『もうひとつの恋』が今の時代はLGBTQの観点から見たらまずいのでは?と思いました("男同士"で「オエ~」と表現して見せるところ)。後、『かわいそうなママ』のティモシーは、『エッグ・スタンド』のラウルに通じるものを感じました。

 

今回は、手短な感想となりました。

それでは、また!!