青海のブログ

本や映画、展覧会の記録と感想等。時々、発達障害について。

ヒグマの恐ろしさ(『羆嵐』を読んで)

読書会の課題本のため、吉村 昭氏の小説『羆嵐』を図書館にて借りて読了しました。
日本史上最悪の獣害事件と言われる「三毛別羆事件(さんけべつひぐまじけん)」をモデルにした小説です。

f:id:aoumiwatatsumi:20210217182627j:plain


小説の感想は後日また記事にするとして、 ここでは熊、特に北海道に生息するエゾヒグマ(ここではヒグマと呼びます)に絞って、過去の獣害事件やその習性等についてまとめました。知れば知る程、恐ろしくなりました。襲い掛かられて、咄嗟に投げ飛ばして助かった、というのは本州のツキノワグマレベルの話です。

 

【目次】

 

ヒグマの特徴

 

身体が大きい

 

体長はオスが約1.9 - 2.3m、メスが約1.6 - 1.8m。体重はオス約120 - 250kg、メスが約150 - 160kg位だそうです。

エゾヒグマ - Wikipedia


羆嵐』の人食い熊(オス)は、体長2.7m、体重383kgで、実際の三毛別の事件のヒグマもほぼその通りだったようです。

身体が大きいということは、まず力が半端なく強いということ、そして、それだけの身体を維持するには…そう、沢山食べなければならないのです。

 

 

共食いする

 

ヒグマは雑食性だそうです。木の実や草も食べるようですが、魚やお肉も食べます。場合によっては人間もいただきます。屍肉も食べるので、「死んだふり」は効きません!
前述したように、大きい身体を維持するには、沢山食べる必要があるので、弱くてとろくてそれなりの大きさがある人間なんて、格好の"餌"です。
また、ヒグマに限らず、彼らは共食いをします。山で熊の死体を見かけないと言われますが、やはりそれなりの大きさがある"餌"となると、同族の死骸なんてうってつけです。子育て中の母熊が、絶対に同族を近づけないのは、自分の子熊が"餌"にされるからです(オスの熊なんて超危険)。

 

 

素早い

 

ヒグマは時速40kmで走れるそうです。舗装された道路ではなく、岩や凹凸や傾斜のある山の斜面での話です。全速力で60kmなんていう話も聞きますが(平地での話?)、とにかく自動車並の速さ。多少離れていても、安心は出来ません。また、木登りにも優れ、泳ぐことも上手いそうです。チート過ぎ。

 

嗅覚が鋭い


目はあまり良くないようですが、嗅覚や聴覚は鋭いようです。犬よりも遥かに優れた嗅覚で数キロ先の匂いも嗅ぎつけるそうです。風向きを見ないと、猟師でも接近を察知されてしまいます。

 

執着心が強い

 

縄張り意識が強く、また一度自分のものにした獲物を取り上げられると、どこまでも追ってきます(嗅覚も強いし、速いし振り切れない)。登山者が一旦ヒグマに荷物をあさられたら、絶対に取り返そうとしては駄目です。また、食いかけの死骸を取り返そうとするのも駄目。それはヒグマに喧嘩を売る行為です。相手を殺さない限り、取り返せません。

 

火を恐れない

 

獣類は、一般に火を恐れると言いますが、これまで起こった獣害事件では、火を盛大に焚いている家にも侵入してくるそうです。むしろ、「人がいる」のを知らせることになりかねないとか(怖)

 

賢い

 

ヒグマは知能が高いようです。イヌと霊長類の間という研究結果が出ています。好奇心旺盛で、学習能力も高いとか。記憶力に優れ、危険は場所や、隠した獲物の場所も忘れません。
そして、その習性を熟知したハンターでないと、裏をかいて返り打ちにする巧妙さがあります。

 

羆嵐』に彼らの「戻り足」という習性が紹介されています。ヒグマは、自分の足跡が猟師の追跡をまねくと理解します。そして、その嗅覚で自分を狙う猟師の接近をに気付くと、今まで歩いてきた道の自分の足跡を後ろ向きにたどって戻り、ある程度きたら近くの繁みに隠れて待ち、やってきた追跡者を後ろから襲うそうです。


強いだけでなく、奸計をめぐらす程賢いなんて最悪です。ちょっと違いますが、↓これを思い出しました。

 

「もっとも恐るべき化物とは何か わかるかねインテグラ
「………吸血鬼」
「そうだその通りだよ 我らが宿敵吸血鬼だよインテグラ
 ではなぜ吸血鬼はそれほどまでに恐ろしい?」
(中略)
「…………力が強い?」
「そうだ 吸血鬼はとっても力持ちなのだよ インテグラ
 反射神経 集中力 第六感 身体能力 特殊能力
 耐久力 吸血能力 変身能力 不死性 etcエトセトラ etcエト     

 セトラ
 しかし最も恐るべきはその純粋な暴力………『力』だ
 人間達を軽々とぼろ雑巾の様に引きちぎる
 そしてたちの悪いことに吸血鬼達はその力を自覚している
 単一能としてでなく 彼の理知ロジックを持って力を行使する

 『暴君』だ 吸血鬼との近接戦闘は死を意味する
 いいかねインテグラ 吸血鬼とは知性ある
 血を吸う『鬼』なのだ これを最悪といわず何をいうのか」

 
(以上『HELLSING』4巻 平野 耕太 著 少年画報社 より引用)

 

HELLSING(4) (ヤングキングコミックス)

HELLSING(4) (ヤングキングコミックス)

 

 

過去の獣害事件


以下のまとめられたページがおすすめ。

akistyle.jp


福岡大学ワンダーフォーゲル部ヒグマ事件」については、ここ↓もおすすめ。亡くなられた方の残したメモが本当に、怖いです。

www.ne.jp


私は、大昔、山登りをしていた時期があり、北海道の山も行った事があります。熊よけに鈴を付けていった程度の対策でした。たしか、メンバーの間で熊スプレーも所持も提案されたけど、そこまでしなくていいか、みたいに却下されました。
縦走する途中で、「ヒグマを見かけた」(実際は遠目に見える程度だったようですが)という他の登山客が口々に言っているのを、同行のメンバーとわりとのんびり聞いていた記憶があります。当時、こんな事件があった事をちゃんと調べていたら…

 

この事件に関しては、北海道の山へ入ることに対して、ヒグマへの対策や事前勉強をしていなかったのが悔やまれます。ヒグマは執着心が強く、一度確保した獲物を取り上げられると、どこまでも追いかけてくるそうです。この事件でも、被害者達がヒグマが一旦あさった自分達の荷を取り返したのが駄目だったとか。荷をあきらめて、とにかくすぐ全員で下山すべきでした。

しかし、後から言ってもしょうがないですけどね。亡くなられた方々のご冥福をお祈りいたします。

 

星野道夫氏がヒグマに食われた事件は、当時状況を知らないまま、「莫迦な人もいるんだな~」で済ませていました。しかし星野氏は熊のことに熟知されていたようだし、関係者によって違う事を言っているようで、真相は藪の中です。


「ペトロパブロフスク羆事件」、携帯電話で正に自分が食われている過程を実況中継しながら死んでいくなんて、経験したくないです((((;゚Д゚)))ガクガクブルブル

 

で、小説『羆嵐』の感想は、次回で述べます。