青海のブログ

本や映画、展覧会の記録と感想等。時々、発達障害について。

映画『金の国 水の国』感想

長く休んでいた趣味(本名でやっている)を再開したこともあり、こちらのブログがおろそかになってしまっていました。でも細々とこちらも続けるつもりですので、よろしくお願いいたします。

 

さて、先日、月曜の夜なのに(諸事情で…)、映画『金の国 水の国』を観てきました!

 

素敵な作品でした

 

2023年製作/117分/G/日本
配給:ワーナー・ブラザース映画

 

評価:★★★★★(5つ★満点))

 

商業国家で水以外は何でも手に入る金の国と、豊かな水と緑に恵まれているが貧しい水の国は、隣国同士だが長年にわたりいがみ合ってきた。金の国のおっとり王女サーラと、水の国で暮らすお調子者の建築士ナランバヤルは、両国の思惑に巻き込まれて結婚し、偽りの夫婦を演じることに。自分でも気づかぬうちに恋に落ちた2人は、互いへの思いを胸に秘めながらも真実を言い出せない。そんな彼らの優しい嘘は、やがて両国の未来を変えていく。

(※「映画.com」サイトより引用)

 

原作は、2017年(第12回)「このマンガがすごい!」でオンナ編第1位になった岩本ナオ先生の漫画です。

 

 

以下、twitterで鑑賞直後からつぶやいた内容を元にした感想です。

 

月曜日夜遅めの上映でしたが、鑑賞した都内の劇場では、そこそこ(全体の1/4位?)観客が入っていたようです。

 

そして鑑賞したら…うわわ、こんなに良い出来だとは思わなかったです。今の時点で、2023年観る映画(アニメという枠にとどまらず)で一二を争うクオリティかも…とプチ興奮。そうしたら、帰りの電車逆に乗ってしまいましたorz(※月曜日の夜です)

お陰で翌日は睡眠不足…(;´Д`)

 

私は、『金の国 水の国』の原作漫画を元々読んではいました。が、(世評の高さの割には)そんなに良い出来かな?という感想を持った程度でした。正直、これがこんなに評価されるとは思わなかったです。

それなのに不思議、映画(アニメ化)作品はとっても引き込まれて楽しめました。鑑賞中の没入感が凄いです。また、いくら良い原作でも、それを原作通りに映画化(アニメ化)しても名作が出来るとは限らないのがこの世の常。本作品は、監督はじめスタッフがとても良い働きをしたということなのでしょう。

 

金の国 水の国』は作画より、内容のクオリティにやられました。

確かにアニメーションや美術は美しいです。「金の国」アルハミド(オスマン・トルコを意識して描かれたのか)の乾燥したところや壮麗な都の描写(寄木細工みたいな小道具の描写も実に綺麗)、「水の国」バイカリ(ブータンを意識?)のみずみずしい国土の描写も良く伝わってきます。特にアルハミドは、砂漠の乾燥した空気感の表現があるから、王族のふんだんな水の使い方がいかに贅沢か良く表現されています(それは王権の強大さを示すことに他なりません)。あの睡蓮の池や姉上の回想シーンとか…

 

でも今時のアニメでは、このレベルの作画は他でも見られるのではないかと思います。

 

(※以下掲載画像は、映画『金の国 水の国』公式サイトからの引用です)

「金の国」アルハミドの都

「水の国」バイカリの族長の城

 

この作品の良さは、そういった美点もさるところながら、脚本とか演出を丁寧に積み重ねていって(小ネタも沢山)鑑賞者を作品世界に引き込み、爽やかな感動を呼び込むその”強さ”にある気がします。

私もすっかり物語にひきこまれて…ちょうど決死の逃避行シーンの鑑賞中、映画館の暗闇の中「早く行け!(逃げろ)」と思わずつぶやいてしまいました(恥)お隣の方から見たら、完全に不審者でした(;´∀`)

 

この作品はもう、主役の二人(ナランバヤルとサーラ)がね〜クライマックスから見ていて(・∀・)ニヨニヨしっぱなしです。命がけの逃亡シーンのさなかでも、たまたま手が重なっただけでお互いドギマギしちゃって(そんなことしている場合じゃないだろう)。末永く爆発しろ。

 

「水の国」の青年ナランバヤル

「金の国」のぽっちゃり系王女サーラ

 

上にあげた画像のとおり、ナランバヤルもサーラも決して美男美女じゃありません。でも映画を観ているうちに、彼らを好きになってしまう観客が少なくないと思います。とっても良い男、素敵な女性だと。これをあざとくなく静かな説得力で見せていく脚本・演出の力と言ったら…

 

それに、主役二人がヘタに美男美女じゃないところが良いかも。他の人には一見分からないけれど、当人同士にしか分からない互いの美点、お互いがお互いにとって唯一無二であるという、恋特有の素晴らしさが描かれていて…こちらまでキュンキュンします💕

 

この映画、『金の国水の国 』が凄いのは、「人は見た目じゃない。心映えの美しさが大事」「お互いの思いやりが大切」という、普通に聞いたら「ケッ」と言いたくなるメッセージを、上っつらの言葉ではなく、ちゃんと映像・脚本・演出で「見せる」ことで、きちんと説得力を持たせていること。

 

このシーンも良かった

 

後、端役について。この映画は、主役級キャラから、端役にいたるまで、みんな「生きて」います。物語の進行に都合が良い駒じゃなく、みなその人生の奥行きを感じさせる存在感。原作がそうなんでしょうけれど(記憶があいまい)。

 

サーラのお姉さまのレオポルディーネって言ったら、名香智子先生の『シャルトル公爵シリーズ』思い出してしまいます。岩本ナオ先生、もしかして意識して命名?サーラとは腹違いだろうけど、遺伝子が違いすぎる…93番目の王女(妹)なんて、よく交流があったと思います。そして、その93番目の王女があれだけ立派な邸宅に住んでいるなんて、アルハミドはどれだけ富がうなっているのかと思いました。

 

 

そのレオポルディーネに仕えるライララ、なにこのイケメン…(女性だけど)あのシンプルな造形で、きちんとキャラがたっているの凄いです。『アリババと40人の盗賊』の女奴隷モルジアナ並みの有能さ。

 

新日プロレスのような?武闘派知識人の皆様も良かったなあ。

 

それから、バイカリのナランバヤルのお父さん、作中でサーラが思うように、本当にナランバヤルのお父さんだと分かるキャラクター造形なんです。外見じゃなく、遺伝子の存在を実感する描き方。

 

…等と、色々な角度から楽しめた良作でした。

 

今回、この映画『金の国水の国』を鑑賞した翌日は、あまり寝てないのに加えて、朝残業して一日ガッツリ働くことになりました。

それなのに、思ったより自分は元気だったんです。なんというかほかほかした気持ちでした。そうして、優れた創作物は(合う合わないはあるとしても)人に元気を与えるんだということをこの素晴らしい映画作品から教わりました。

 

まだ上映中なので、ご興味がある方は、是非ご覧ください‼

 

ロマンチック~

 

それでは、また!