青海のブログ

本や映画、展覧会の記録と感想等。時々、発達障害について。

2021年前半に読んだ本の感想(拾遺)

梅雨だから蒸すのは仕方がないですが、晴れ間が最近無いのが困ります。布団が干せなくて…

さて、今年前半に読んだ本で、書き残している分の感想をまとめて書きます。

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滅茶苦茶忙しい時期に購入して読んだ

【目次】

 

※各書籍について、盛大にネタバレしています

 

『こころ』夏目 漱石

 

 

評価:★★★★★(5つ★満点))

言わずと知れた、夏目 漱石の名作小説です。読書会の課題本だったので読みました。

昔、高校生向け?に書かれたダイジェスト版を読んでいましたから、元々内容は結末まで知っています。で、本書を読む前は正直全然期待していませんでした。

が!読むのが快く、充実した読書の時間を過ごせました。長いのに、読み手を最後まで惹きつける筆力が流石です。


よく名作小説・名著のダイジェスト版や漫画で簡易に内容を理解させる本がありますが、それじゃダメなんだ、本物の文章に接しないとその魅力が分からないのだとこの読書で感じました(※原文は旧かなづかいなのでしょうが、私は今のかなづかいで読みました)。

 

『こころ』は不思議な小説です。「下 先生と遺書」がなげえよ!と良くツッコミが入るようですが、確かに長い。こんな細かいことまでいちいち書いて人に読ませないよ、と思います(笑)

そして、「遺書」で終わっていますが、本当に先生が自殺したのかはこれでは分からないし、危篤状態の父を残して東京行きの汽車に飛び乗った「私」がその後どうなったのかも書かれていません。

「遺書」に書かれる若き日の先生と下宿先の「奥さん」の"心理戦"がなんだか可笑しいです(※先生の思い込みの可能性もあります)。しかもこの「遺書」に書かれていることをそのまま受け取って良いのかとも思います(「信頼できない語り手」だったりしてね)。

 

一応、内容を信じて読むとして、先生がKに対してとった態度は、若い頃ならやらかしがちなことかと思いました。読んでいて、Kも先生もとても可哀想だと感じました。

 

でも、Kは、どうせ自害してしまうのなら、先生をボコボコにしてからでも良かったのでは?『坊ちゃん』の坊っちゃん山嵐も参戦でお願いします(笑)

 

『「舞姫」の主人公をバンカラとアフリカ人がボコボコにする最高の小説の世界が明治に存在したので20万字くらいかけて紹介する本』山下 泰平 著

 

 

評価:★★★★☆(5つ★満点))

タイトルの破壊力が素晴らしいですね。この本読むために森 鷗外の『舞姫』を再読しました(笑)

本書のタイトルになっている文章は、ブログの元記事を読んだ方が内容的にもビジュアル的にもイカレていて最高。取り上げられている星塔小史作「蛮カラ奇旅行」という明治の小説は、作中で"バンカラ"である島村隼人"快男児"のつもりで書かれているようですが実際はシリアルキラーの狂人が『舞姫』の主人公(とは明記されていないけど、どう見てもモデルらしい)をボコボコにして、そのお蔭でエリス(作中では何故かイギリス人で「雪枝」という名前)が正気に戻り、皆で万歳で終わり♪という、狂った話ですwww

cocolog-nifty.hatenablog.com

 

漱石『こころ』の先生も(Kと協力して)ボコボコにするようお願いします(念押し)

 

上記の話が狂っていますが、本書自体は明治時代に流行って、今はほぼ忘れられている娯楽小説について研究・紹介された真摯な内容でした。

 

『ベルリンうわの空』『ベルリンうわの空 ウンターグルンド』香山 哲 著

 

 

評価:★★★★☆(5つ★満点))

19世紀末のドイツ・ベルリンを舞台とした森鷗外の『舞姫』と違い、こちらは現代のベルリンが舞台の漫画。ベルリンに在住の漫画家、香山哲さんによる現地での生活を描いた漫画です。

読んだ印象は、ちょっと"正しい"感じ?「説教臭くない」という感想が多いですが、この感じが鼻につく人もいるのではないかと。とても立派な人達だと思いますが。

 

2作目の『ウンターグルンド(地下)』は、香山さんがベルリンでひょんなことから見つけた地下街のスペースの活用の話です。ここで(支援を必要とする人のため)シャワー&洗濯の無料のシェアスペースを仲間達で運営することになります。

ホームレス状態の「コスモ」がこのスペースに来て、「ちょっとよっただけなんだよね」というところ、ささやかなシーンだけど個人的にはほっこりして印象的でした。寄りどころが無くて弱っている人の居場所になっているところが。

 

本来の目的もあるけど、こういう"副産物"は良いなあと思います。

 

『まるごと 腐女子のつづ井さん』つづ井 著

 

 

評価:★★★★★(5つ★満点))

つづ井さんは社会性があるコミュ力高い方だなあ。本書で描かれる腐女子の皆さんは、なんて優しく平和な方々なんだろうと感心しました(すぐ相撲バトルが勃発しますが…笑)

お互いの距離感も絶妙。気遣いが凄い。

 

「独り暮らし」で自分を面白がらせる話がとても良かったです。これからもご自分の幸せを大切になさって欲しいと願っています。

 

カレー沢薫のワクワク人生相談 』

 

 

評価:★★★★★(5つ★満点))

このコロナ禍で、かねてから「部屋から出ない」を提唱されていたカレー沢メツアに時代が追いついた…と感慨深いです。


人生相談好きで色々読んでいる私ですが、本書は「結構まっとうな解答をしているなあ」という感想です。そして、相変わらずの言語センスがさく裂www

 

何かと言うと、質問にまず「部屋から出るな」を勧められています(笑)


自閉症の引きこもり体質の自分には、「部屋から出なければ問題自体が起こらないため解決」という主張には同意です。でもカレー沢先生みたいに、「無職の引きこもり」という"選ばれしジョブ"には就いておりませんので(泣)、「いいなあ」と思いつつ働いています。

カレー沢薫先生は、漫画家・コラムニストで既婚者("主婦"と名乗れる身分)ですが、ご自分で「無職の引きこもり」と名乗られていますのでその通り書きました。


今年の読書は、漫画の比重が大きいのですが、じっくり文芸書を読みたくもあります。が、もう今年半分過ぎてしまったのだな…と思います。

資格取得の勉強もあるし、本がどれだけ読めるのか。読破したい本もあったけど、今年中には無理かも…


それでは、また!