やっぱり梅雨突入みたいですね…
九州大丈夫かな、(´・ω・`)ショボーン
さて、萩尾 望都先生のバレエ漫画、『フラワー・フェスティバル』の読書感想です。
※注:盛大にネタバレしています
評価:★★★★★(5つ★満点))
【目次】
概要
バレエに打ち込む女子高生の主人公が、夏休みにロンドンのバレエスクールに参加し、舞台の外の人間模様にすったもんだしながら成長する少女漫画作品です。1988年~1989年『プチフラワー』にて連載されました。
あらすじ
横浜のバレエスクールに通う日本の女子高生のみどりは、イギリスへピアノ留学した血のつながらない兄の薫に密かに片思いしていました。
ロンドンの名門・フローラル・バレエ・スクールに就職していた薫の縁で、みどりは演出家のガブリエルに声をかけられ、スクールのサマー・キャンプに誘われます。バレエに反対する(血のつながらない)母・園子を説得して、日本のバレエ仲間達とひと夏のキャンプに参加するみどり。
ガブリエルが演出する新作公演「十二宮」のスピリット役に抜擢され驚きますが、パートナーとなるサンダーは厳しく、また薫を中心とした人間模様が大変なことに…?
感想
これぞ少女漫画
「気持ちが変わるのは いままで見えなかったものが ……見えてくるからだ」
これぞ少女漫画!といった文句なしの傑作です。私は萩尾作品はあまり読んでいませんが、先生の作品にしては余り重くならず、後味もかなり良い印象です。
メインの2人、みどりとサンダーがかわいいかわいい。
絵も、この頃の萩尾先生の絵はとても素晴らしい。美男美女が出て(園子さんも何気に美人だし)花やレースがふんだんに描かれて、美しいバレエシーンの数々。萩尾先生、バレエ好きなんだろうな、何より漫画が大好きなんだろうなということがひしひしと伝わってきます。イブの衣装がいつも花柄というルールも好き。
兎に角、読者としては名匠の力みなぎる仕事をただただ享受して、大船に乗った気分でこの世界を堪能すれば良い。絢爛たる作品世界に、万雷の拍手を!!
地味に論理的に話を構築
とはいえ、本作は安易な夢物語、少女の願望充足型の話になっていません。
地味に、さりげなく登場人物や状況の設定を積み上げて、ストーリーへ無理なくつなげているのは流石と思いました。
ヒロインのみどりがの家族ステップファミリーであるということ、血のつながらない兄の薫の縁で、イギリスのバレエ学校のサマー・キャンプへ参加する流れとか。
みどりが1/8オランダの血が入っていて、日本人離れしたリズムの持ち主であることで、ガブリエルの目に留まること。
また、いきなりロンドンのキャンプに参加して何とかなるみどりの語学力はさりげなく説明されています(生さぬ子を間違いなく育てようとした母により「授業の半分は英語」で実施されるレベルの高校へ入学している)。
サンダーがちょっと融通が利かない位の真面目な性格な設定(ヨーロッパツアーに行かずに留守番していた→みどりと組むことになる)とか。
みどりが抜擢されるのは、主役(プリマ)ではなく、案内役(でも非常に重要な役)のスピリット、それも学校一のダンサー・レイチェルの代役、という設定がまた、「ありえるかもしれない」感があって秀逸。いきなり主役へ抜擢!では、ちょっと荒唐無稽な感じがしますから。
それから、日英ダブルの薫の魔性っぷりは、みどりが到着直後のパブで早速説明されます(笑)
見事な群像劇
本作は、日英で沢山の登場人物達が出てきます。
これだけ多くの登場人物を作り描き分けて、その複雑な相関関係と共に、それぞれのキャラクターや人生を垣間見せる手腕は見事。登場する人物達に、皆必然性があります。
蘇芳さんやレイチェル等、程々にイヤなところやしたたかなところがある描き方も好きです。玉子ちゃんも素敵(笑)
しかし、「下手すると、みんな身内同士」って、小池田マヤ先生の『うめぼし』みたい(笑)
バレエへの愛
私はバレエはあまり良く知りませんが、本作は萩尾先生のバレエへのふんだんな知識と愛が充実しているので、「十二宮」の様子も、実際の舞台を見せられているようで楽しかったです。「十二宮」自体が、バレエの歴史と未来を見せる内容なので、バレエ好きにはたまらなそうな演目です。
後、連載時の表紙絵なんでしょうが、各回の扉絵で結構、群舞を描かれているのが印象的でした。萩尾先生は、ソロで踊るメインダンサーだけではなく、あらゆるバレエの要素が好きなんだろうな…。
一見"ありがち"なストーリーですが、萩尾望都先生ならではの作劇術・画力がさく裂した名作でした。おススメです。
それでは、また!