青海のブログ

本や映画、展覧会の記録と感想等。時々、発達障害について。

『古代ギリシャのリアル』藤村 シシン 著 感想

ゴールデンウイークは、読書と、掃除に費やしています。(しょぼい)ベランダガーデニングも夏に向けて準備をちょこちょこ。


さて、藤村シシンさんの著作『古代ギリシャのリアル』の感想です。

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表紙イラストは著者作画。凄い

※注:盛大にネタバレしています
評価:★★★★☆(5つ★満点))

 

古代ギリシャのリアル

古代ギリシャのリアル

  • 作者:藤村 シシン
  • 発売日: 2015/10/15
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
 

 藤村シシンさんとは

藤村シシンさんは、高校生の頃出会った『聖闘士星矢(セイントセイヤ)』のアニメをきっかけに、古代ギリシャ研究に一生を捧げると誓われた方です。進学・進路も『星矢』基準に変更し、今ではNHKカルチャーセンター等で古代ギリシャについて講義をされたり、イベント「古代ギリシャナイト」を主催されたりされています。推し神はアポロン

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今回のオリンピックのギリシャでの採火式では、古代ギリシャ語での同時通訳を担当されて話題となりました。まさにオタクの星古代ギリシャ研究者の鑑。

 

togetter.com

 

聖闘士星矢について

ギリシャ神話をベースとした、車田正美先生作のバトルファンジー漫画で、週刊少年ジャンプ全盛期の作品の一つです。また、これを元にしたスピンオフ作品も沢山あります。

 

聖闘士星矢 1 (ジャンプコミックスDIGITAL)

聖闘士星矢 1 (ジャンプコミックスDIGITAL)

 

 

私は、思春期にハマりました~(笑)車田先生の描かれた原作(冥王編終わりまで)と、アニメはポセイドン編まで。それ以降の、別の方が手掛けたスピンオフまでは拝見していません。

アニメはキャラクターデザインが荒木伸吾・姫野美智両氏で、実に作画が美麗でした (テレビだと、その回の作画担当によって、がっくりくる時もw)色々と、アニメオリジナルな点が(キグナスダンスとか、オリジナルキャラとか…www)受け入れがたかったりしましたが、美術や演出、横山菁児先生の音楽が良かったですね。映画『真紅の少年伝説』の『アベルのテーマ』なんて、今聞いても名作だと思います。

 

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私は、双子座ですので、あのサイコパスジェミニのサガと、カノンの兄弟と一緒です。白い方のサガはあまり好きではないのですけどね。ちなみに『星矢』で一番の推しキャラは、黒いサガ(笑)

 

感想

面白かったです

読んでいて面白いなー、と思ったのは、青い空・青い海という概念が古代ギリシャではなかったということ。内陸から侵略してきた民が作った古代ギリシャ(という国家があった訳ではないのですが)では、「青」を言い表す適切な言葉が無かったとか。
最高神ゼウスが浮気性であるという神話自体は、古代ギリシャの各地域の人が、ゼウス様と自分達を何とか関連付けたくて、自分の先祖は、ゼウスの落し胤なのだという後付けエピソードを作っていったという話。

ゼウスの姉にして正妻のヘーラーは、元々先住民が崇拝していた地母神で、新しく侵攻してきた民が奉ずるゼウスと夫婦とされた、という話もなる程と思いました。

現代のギリシャ人達が、世界中の観光客が古代ギリシャばかり見て、自分達を見てくれないという、屈折した想いなど考えたことはありませんでした。

人型の神なんて…!

ギリシャ神話は元々好きですが、クトゥルフ神話を通過した身(つまみ食いですが)としては、「人間型の神なんて…」と思ってしまいます(笑)

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Wikipediaアポローン」より引用

 

古代の神と言ったらな、こうだろうが!!

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Wikipediaクトゥルフ」より引用

 

…なんて、程々にしておきます(;´・ω・)

でも、本書を読んで、元々の古代のギリシャ神話の神が人間を見る視点が、結構クトゥルフ神話の神と近いのでは?と思いました。いやいやクトゥルフの神々はもっともっと人に対して無関心でしょ、と御叱りを受けるかもしれませんが。

 

内容を絞っても良かったのでは

本書は
第1章 「古代ギリシャ」の復元、
第2章ギリシャ神話の世界
第3章 古代ギリシャ人のメンタリティ
と分けて、それぞれギリシャ地域(一貫して国が続いてきた訳では無い)の歴史、ギリシャ神話の変遷についてや神々の履歴書、古代ギリシャ人の労働観、死生観等を述べておられます。面白くはあったけど、視点が今一つブレていて、散漫な印象。

自分としては、「古代ギリシャ人のメンタリティ」に絞って、1冊執筆していただいても良かったのではないかと思います。

 

旅行記を出して欲しい

Web上でまとめられている著者の古代ギリシャ遺跡の旅行のツイート集(※ギリシャに限らない)が凄く面白かったので、このテーマで本を出して欲しいです。

togetter.com

行く先々で、「これは〇〇が見ていたのと同じ海…!」とか、神殿に関する薀蓄とか、ただの平原、海や遺跡がシシンさんの深い教養・知識で意味がある風景に一変するのがたまりません。

↓下記にご紹介したのは日本の話ですが、通じるものを感じました。

歌舞伎の連中を琵琶湖に案内したが、比良山を教えても、一向に反応を示さない。で、「近江八景の比良の暮雪ですよ」といったとたん、みな感動してふり仰いだという。自然を活かしているのは言葉なのだ。或いは歴史といってもいい。もし「近江八景」というものがなかったら、比良の高嶺に雪が降ろうと降るまいと、誰も興味を持ちはしないだろう。ということは、自然は、――少なくとも日本の自然は、私たちが考えている以上に人工的なものなのだ。

白洲正子 著 『近江山河抄』より引用

 

近江山河抄 (講談社文芸文庫―現代日本のエッセイ)
 

 

シシンさん絵が上手い

ところで、表紙のイラストが著者によるものと知ってびっくりしたのですが、シシンさん、絵がお上手ですね~(驚)ブログでも、ギリシャ神話の神々の凄く上手い絵を掲載されています。

それで、以下のドリーム漫画も拝見したのですが…

アポロンドリーム漫画:恋人はアポローン
アポロンが家にやってきた~

www.style-21.jp

 

なんだか…これ…凄い既視感…www

 

いいね!光源氏くん (FEEL COMICS swing)

いいね!光源氏くん (FEEL COMICS swing)

 

 

いや、シシンさんの方が先ですが、あまりにまんまで笑いました。

 

今後、藤村シシンさんが新たな著作を出されることを願っています。面白そう~