青海のブログ

本や映画、展覧会の記録と感想等。時々、発達障害について。

『深川安楽亭』山本周五郎 著 感想(ネタバレあり)

皆さん、昨夜の地震は大丈夫でしたか?あと約1ヶ月で東日本大震災から10年目だというのに…

 

ところで、山本周五郎の小説『深川安楽亭』の感想です。

※注:盛大にネタバレしています

 

深川安楽亭 (新潮文庫)

深川安楽亭 (新潮文庫)

 

 

 

評価:★★★★★(5つ★満点))


山本周五郎は、私の大好きな作家の一人です。
まだまだ未読の話が多く、これから読む楽しみがあるのが嬉しいです。

『深川安楽亭』は朗読で2回聞いた後で結局図書館で収録本を借りて読みました。

 

この小説は、これまで読んだ山本周五郎作品の中では異様な印象を与える話です。

 

舞台は深川の「島」と言われる場所にある一見さんお断りの居酒屋、安楽亭

その実態は、今なら適応障害だの人格障害だの、発達障害だの診断されそうな
「内面がかたわ」なはぐれ者達の吹き溜まりであり、実は密貿易の拠点となっているデンジャラスなスポット。
どちらかというと悪役サイドが主役の話なのです。

 

(注;以下ネタバレあります)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

たまらないのは、殺人したばかりの登場人物が(しかも“慣れている”感アリアリ)その直後に親からはぐれた子雀を拾って、「おっ母さんとはぐれたのか」と世話を焼くくだりが…もう…
その人物の母親との何か訳ありな様子がキャラ造形に奥行を感じさせるアクセントになっています。

 

しかーし、名も名乗らない"客"がもっと早く、大金の事を打ち明けていたら、あんな死傷者も出なくてすんだのでは?と思います。

利他的な行動(※失敗したけど)をとった後でも堅気者達が去った後は平常運転な安楽亭の面々がイイんです。

 

個人的には亭主の幾造の娘が興味深かったです。あんな環境で無頼者達の慰み物にならないかと思うのですが、その様な事もなさそうで、無法地帯になじんで動じないでいます。