青海のブログ

本や映画、展覧会の記録と感想等。時々、発達障害について。

『青いパパイヤの香り』感想(ネタバレあり)

※盛大にネタバレしています

 

Amazon Primeベトナム映画『青いパパイヤの香り』を視聴しました。

 

青いパパイヤの香り(字幕版)

青いパパイヤの香り(字幕版)

  • メディア: Prime Video
 

 

1993年製作/104分/フランス・ベトナム合作
原題:L'odeur de la Papaye verte
配給:デラ・コーポレーション

評価:★★★☆☆(5つ★満点))

 

 

 あらすじ

 

物語は大きく2部に分かれます。

 

第1部は1951年のサイゴン(現ホーチミン)でスタート。田舎から10歳の少女ムイが、織物を扱う商家へ奉公にあがります。


若くして夫に先立たれて日々お祈りばっかりの大奥様に、その息子で高等遊民っぽい旦那様(※今まで数回の家出実績あり)と、商売を切り盛りする優しくもしっかり者の奥様と青年の長男、まだ子供の次男・三男という構成の一家と年配の女中の先輩ティーを交えた中で、ムイはせっせと働きながら成長していきます。奥様は、幼くして亡くした娘の面影をムイに重ねて、かわいがってくれます。実家への帰省を勧めたり、ムイがうっかり大切な壺(三男のいたずらが原因ですが)を割ってしまっても怒らない。


大奥様に昔から恋して、引っ越し先までつきまとうトゥアン爺さん(あんたそれストーカーだよ!)のような人も出てきます。

 

主家の内情は中々複雑で、ある日ぽんこつ野郎な旦那様がま~た家の有り金全部さらって(奥様が稼いだお金!)家出します。大奥様は、「お前が息子を惹きつけておかないからこうなるんだ…悪い嫁だ」とモラハラします(酷い!)。後日、旦那様は病んで帰還するのですが、亡くなります。

 

 

第2部では、10年後。

 

美しく成長したムイ。が、衰えた主家では彼女を雇えなくなり、交友のあるパリ帰りの作曲家・クェンさんの雇い人として転職する事になります(ムイを娘のように思ってきた奥様と涙ながらのお別れ)
新しい職場で働くうちに、クェンさんに見初められて、お嬢様の婚約者を差し置いて玉の輿にのります。初めて読み書きも教わり始めます。ラストは、懐妊したムイが、夏目漱石の『草枕』の一節を読み上げるシーンで終わります。

 


映画の背景

 

監督のトラン・アン・ユン氏は、ベトナム出身で子供の頃ベトナム戦争から逃れるためフランスに移住したそうです。内面はかなりフランス人に近いのかもしれません。この作品の舞台に対しても、父母の世代のベトナムへの郷愁と共に、異国の風物に対するエキゾチシズムでもって撮影しているのを感じます。
全編フランスの屋内スタジオセットでサイゴンを再現して撮影されたとかで、どうりで湿度が高いアジアモンスーンの雰囲気にいまいち欠けるなと思いました。

 


感想


この映画、好きか?と言われれば好きです。抒情的な、雰囲気で感じるのが良い映画でした。

 

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似…似とらん(汗)



まず何より、ムイたん(幼女)がかわいくてかわいくて×100 (萌´д`)モエェ
かわいいアジアの幼女のピュアさに心洗われます。

ただ、他の方のレビュー等拝見すると、「一生懸命働いて、とうとう幸せをつかんだ」とか書かれているのに違和感が…。大人になってからの雇用主のクェンさんも、彼女の事を「良く働く」と評しますが、え?え?え?


ムイたんそんなに働いていましたっけ?

 

結構ポカーンとして手を止める事が多い(パパイヤやらカエルやら、気を取られ過ぎ)し、いつ先輩のティーさんや奥様から叱咤されるかとハラハラしました。
(この話、第1部の主家の奥様やティーさんがびっくりするくらい彼女に優しくて、「こんな奉公先無いよ」というレベルです。ムイも下流育ちなら、もっとはしっこいだろうし、「他人の飯を食う」現実は、こんなものでは無い筈。)


大人になっても、クェンさんの留守を狙って、元の主家からいただいた一張羅でおめかしするわ、口紅(クェンさんの婚約者が忘れていった?)をひいてみたり(すぐバレる)。クェンさんはクェンさんで、彼女の美しさに初めて目が行き、また彼女が自宅を快適に整えてくれていることに気付いてムイに惹かれていきます。

大人になったムイのパートは…まあ綺麗な女優さん(監督の奥さん)でしたが。着衣で水浴びするシーンは、監督のフェチが全開でした(幼女ムイには負けますけどね!)


ムイに惹かれるようになり、彼女の寝所に赴くクェン。あの…これ…シンデレラストーリーというより、「ご主人様が使用人に手を付けた」ってだけじゃあないんですか?あのシーン、やばかったです。実質男女の仲だったとして、「使用人」止まりでもおかしくない身分差でしょう?この映画ではムイは、「妻」として遇されているようで良かったですが。


ご主人様から読み書きを教わるムイ。「何も知らないこの子を、自分が"教育してあげる"んだ」というようなシチュエーションに萌える方はときめくかもしれませんが、これ、"支配"と紙一重では?売野機子さんの漫画『薔薇だって書けるよ』の糞男を思い出してしまいます。

 

薔薇だって書けるよ―売野機子作品集

薔薇だって書けるよ―売野機子作品集

  • 作者:売野 機子
  • 発売日: 2010/03/26
  • メディア: コミック
 

 


そういえば、前の職場(食品工場)では、ベトナムからの技能実習生が沢山働いていました。ベトナム女性って、綺麗だけど超気が強いようです(※中国女性のきつさには負けると思う)。あのベトナム戦争でも、女性たちが果敢に戦ったらしいですしね。
ベトナム女性は夫が浮気なんかしたら、●●●をちょん切って、アヒルに食わせる」なんて話、以前に聞いた事あります。この映画でいつ、振られた婚約者が暴走するかと思っていたのですが、クェンさんは無事でした(笑)

 

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ハッピーエンドだけど、時代がベトナム戦争に入っており、その後ムイ達はどうなったか…この映画の監督のように、海外へ移住していったのだろうかと思います。