青海のブログ

本や映画、展覧会の記録と感想等。時々、発達障害について。

『ババヤガの夜』王谷 晶 著 感想(ネタバレなし)

※ネタバレなしの感想です。

 

ババヤガの夜

ババヤガの夜

 

 

評価:★★★☆☆(5つ★満点)

 

装画はなんと寺田 克也氏で(カバー下も充実!)、かっこいいですよ!

 


あらすじ

 

主人公は身長170cm以上、70kgを超える「趣味が暴力」である混血の女性、新道依子(犬好き)。ある時ヤクザと揉めたのがきっかけで大立ち回りの末、暴力団組長・内樹の一人娘の尚子の運転手兼ボディガードとして雇われる事になります。
祖父に「喧嘩」の技術を叩き込まれ、大の男を片手で締め落とす膂力がある依子は、水と油という程異なるお嬢様の尚子から当初は反発されていましたが、なんだかんだで打ち解けていきます。そして…
このメインストーリーと交互に語られるのは「芳子」と「正」という初老の夫婦らしい謎の二人の話。どうやら身分を隠して逃亡中の彼らの静かな暮らしが、ある事件をきっかけに大きく揺らぎますが…

 

 

感想


「誰かの何かとして生きるのは、無理だ」

 

ある意味ミステリーで、この話にある「仕掛け」にはまんまと騙され、やられた!感がありました。「名付けようの無い関係」が、作者が最も描きたかったポイントかな?と思いました。死の匂いが濃厚なラストシーンは、映画のワンシーンのよう。


ですが、うーん…惜しい。これだけの美味しい設定なのに、材料を生かし切れてないように感じます。折角のお話が、短すぎですし。不完全燃焼感。

 

後、これは作品の罪ではないですが、「どこへいっても何をしても生きていける」的な生き方には、やれる事が限られている自分には共感しづらいです。

 

ちなみに、タイトルになっている"ババヤガ"とは、バーバ・ヤーガという、ロシアの山姥的存在(あるいは西洋の魔女?)のことです。大きなニワトリの足のついた移動する家に住み、家畜を病気にしたりする恐ろしい存在だけど、心の清らかな娘には福を授けてくれることも。

 

この話での"ババヤガ"とはいったい誰なのか?それは読んでのお楽しみです。

 

バーバ・ヤーガというと、『ゴースト・ドラム』を思い出しますな。児童文学ですが、苛烈な話で、好きでした。