青海のブログ

本や映画、展覧会の記録と感想等。時々、発達障害について。

『そうか、もう君はいないのか』城山三郎 著 感想

 

そうか、もう君はいないのか (新潮文庫)

そうか、もう君はいないのか (新潮文庫)

 

 

読書会の課題本なので読みました。

 

経済小説で知られた、城山三郎氏(1927-2007)の著作を読むのは、これが初めてです。作家の死後、先だった容子夫人(2000年没)との思い出を綴った文が見つかり、まとめられたのが本書です。しんみりした良い本でした。このご夫婦は仲睦まじいけど、程よい距離感が良い感じです。

 

個人的に印象に残った部分は以下の通り。

 

  • 容子夫人(当時JK!)との出会い

高校生だった容子さん、学校の運動会をさぼっって(こらこら)、また溜まった宿題を片付けに図書館へきたら閉館だった所で筆者と鉢合わせ、そのままなし崩し的に初デート(※初対面です)。映画館や喫茶店と連れ立って、筆者から本を貸してもらい、再開を約してその日はお開き。
この時は、たまたま見とがめた刑事から容子さんの父へ警告が入り、二人は一旦引き裂かれてしまいます……当然だと思いますが。

 

  • 大学寮での読書について

「夜寝る時間が惜しくて、ヒロポン覚醒剤)を服用して眠らずに本を読み続けた」という描写にドン引き。

 

  • 50年続く、読書会

大学講師となりめでたく容子さんと結婚後、文学好き同士で文学の勉強会を始めた筆者。その後50年間毎月(後年は隔月となった)継続したとか。これが一番の驚愕ポイントでした。凄い、継続は力なり。
自分も現在の職場でようやく仕事が継続できるようになり、それを機に色々な集まりに参加するようになりましたが、コロナ禍でほとんどパアとなりました(読書会は、オンラインで参加しています)。人生色々あるし、生半可な事ではこれだけの年月、続けられないですよ。

 

  • 夫の小説を読まない作家の妻

私には考えられませんが(活字中毒)、容子夫人は、城山さんの作品は同人誌掲載の最初の小説『生命の歌』を読んだのが最初で最後らしいです。それで良く作家の妻が務まったかと思いますが、余程ウマが合ったのでしょうかね。

 

  • 追分の旧;油屋(旅館)の感じの悪さ

「輸出」で文學界新人賞を受賞して作家デビューした筆者。賞金の使い道として、編集者の紹介で追分の油屋(旅館)に滞在してその夏を執筆に費やします。堀辰男が『風立ちぬ』を書いた旅館です。
本書で描写される、この時応対した宿のおっさんの態度が感じ悪くて感じ悪くてヽ(`Д´)ノ 客商売なめとんのか、といった気位の高さに呆れました。しかし、こんな名指しで書いちゃって大丈夫だったのでしょうかね。

検索してみたら、この追分の油屋旅館は、既に廃業しています。ああやっぱりその後リノベーションされてギャラリーや本屋、カフェ、アート&レジデンスという複合施設になっているようです。

aburaya-project.com


するする読めました。ドラマにもなったんですね。