青海のブログ

本や映画、展覧会の記録と感想等。時々、発達障害について。

TVアニメ 『平家物語』感想

連休もお天気はぐずつくようで、しょんぼりです。

 

さて、山田尚子監督のテレビアニメ『平家物語』(全11回)を見終わったので、感想です。いや、良かったです。

 

素晴らしい出来でした

 

heike-anime.asmik-ace.co.jp

 

【目次】

 

古代からの繋がりが残る時代

かつては源平合戦、今は「治承・寿永の乱」と言われる平安時代末期の平安時代末期の治承4年(1180年)から元暦2年(1185年)にかけての6年間にわたる国内各地の内乱。

 

この頃の時代が昔から好きでした。源三位頼政の鵺退治のような怪異が当たり前だった古代の名残がある時代、皇族はいまだ神孫であったとき。その皇族に対して、坂東を中心とする地方の武者たちが自分達の権利を主張して立ち上がった時代。家にあった、『学習まんが 少年少女日本の歴史』(小学館)(あおむら 純さん作画のシリーズです)の影響が大きかったと思います。

 

www.shogakukan.co.jp

 

この本で描かれる、源義経が私の初恋でした(その後手塚治先生の『火の鳥 乱世編』のダークな義経像にショックを受けることになります)。

 

 

2012年のNHK大河ドラマ、『平 清盛』にもめちゃ嵌まりました。

 


www.youtube.com

 

超高速平家物語だった

テレビアニメ『平家物語』の話に戻ります。

 

全11回と聞いて、「(こんなにクオリティ高いのに)短すぎる~」と嘆きましたが、結果的には中だるみせず、この短さに凝縮してまとめて良かったと思います。

 

主人公びわの視点で平家の没落・滅亡が語られる

(画像はTVアニメ 『平家物語』公式サイトより引用 以下も同様)

 

平家物語』の良かった点

作画のクオリティ(時々構図が神がかっている時がある)も、美術(草花や海等の自然描写)の美しさ、動画・演出の巧みさ(まさに”アニメーション”)、どれも素晴らしかったです。

 

草花の描写が繊細で美しい

 

内容的に、海の描写が多い

 

自然描写と動画の見事さよ

 

 

また、限られた作品の時間にも関わらず、「祇王」「小督」のエピソードや、平盛子の婚家との事情、平資盛の殿下乗合事件、強訴の様や、以仁王の乱、御子姫君が後白河法皇後宮に入る経緯の話など、随分細かいエピソードまで拾っているなと感心しました。

 

祇王」のようなエピソードも拾っている

 

視聴していると、登場人物が相手の「手をとって反対の手で包み込む」シーンが目につきました。繰り返し描かれるのですが、コロナ禍で接触を忌避する現在なので、特に印象に残りました。

 

OPの羊文学「光るとき」も以前書いたように、満点です。歌詞も音楽も。

 

平家物語』の良くなかった点

既に多くの方が指摘されていますが、平家の蛮行にちょっと否定的なことを言っただけで殺される展開は、いくらなんでもやりすぎです。

父を殺されたびわは、平重盛の家に引き取られる

 

そして、そんな平家方に父を殺されたびわは、平重盛の家に引き取られますが、建礼門院徳子の産屋にまでびわが侵入しているのには違和感がありました。

同じようなことで、天皇法皇と臣下が同じ立ち位置で話をしていることも、ああいうことあるんでしょうか?いくら平家全盛の時であっても、武家風情が廊下で天皇と立ち話、とかありえない気がします。

私はこういったことに疎いですが、後白河法皇(一応、治天の君)と重盛が同じ縁側で一緒に座って会話というシチュエーションも「なんだかなぁ…」と感じていました。そういえば、後白河法皇と重盛(とその息子たち)は、男色関係にあったという説があるので、そういうことを念頭におきながら、「こいつら…ムフフ」と思いながら視聴していました(笑)。

 

それから、このアニメでの平重盛の人物像。いや、私はこのアニメでは重盛推しなのですが、後世の補正が入っていて、人格者過ぎると思います(『平家物語』での描写がそうなので仕方ありませんが)。

 

このアニメでは重盛推しです

 

実際は結構えげつないことしている人だったのに、父・清盛に対するアンチテーゼ的な平家一門の良心担当となっていて、「忠ならんと欲すれば孝ならず。孝ならんと欲すれな忠ならず…」という明らかに儒教的価値観での言葉を発したとされていますが、これは後世の補正かと思います。

 

 

後、佐殿(源 頼朝)の描かれ方。のんびりおっとりしすぎです。そんな人のいい為人ではない筈。政子との力関係も、別にああで良いのですが、終盤は、佐殿が既に清水冠者義高を殺して、娘の大姫はメンヘラになっている筈。あの夫婦があのような様子でいるとは思えないのですが。

 

頼朝がおっとりしすぎ

 

そして!どうしても気になったのは安徳天皇の髪型。アニメ赤子の時以外は、いわゆる角髪(もしくは髻(みずら))に結っていますが、『平家物語』では、この髪型にするのは、壇之浦で入水する最後の最後なんです。

 

左側が安徳天皇。髻(みずら)に結っている

 

平家物語巻第十一 先帝身投』より引用すると、

「…主上今年は八歳にならせ給へども、御年のほどよりはるかにねびさせ給ひて、御かたちうつくしく辺りも照り輝くばかりなり。御髪黒うゆらゆらとして、御背中過ぎさせ給へり…」

現代語訳だと、太字部分は

背中あたりまで伸びた黒髪が美しく揺れておられる

…となっています。この「ゆらゆら」は、『源氏物語 若紫』で後の紫の上が登場するシーンで「髪は扇を広げたるやうにゆらゆらとして」に通じる言葉です。安徳帝はこの時点まで、髪を結っていないのです‼

 

それがいよいよ入水する際に、

「…山鳩やまばと色の御ぎょ衣いに、びんづら結ゆはせ給ひて、御涙におぼれ…」

となりますが、この「びんづら」がみずら(髻)です。本当に最後の最後にこの髪型になるのです。

 

アニメでの平時子安徳帝

 

このことから、安徳天皇は身代わりが入水したとか、ひそかに生き延びたとか説があります。私は高田崇史先生の本で、また別の説を読んで「なるほど」と思ったのですが、それはここでは語りません。

 

平 維盛の人物像

これはアニメの罪ではないですが…

重盛の息子の維盛は、史実でもその美貌で「光源氏の再来」と言われたそうですが、光源氏、やつは非実在男子であって、今まで一度も来たことはないですよ(笑)

 

平 維盛 一貫して戦嫌いとして描かれる

 

アニメ『平家物語』での維盛は、武門の生まれにも関わらず、それになじめず「こわがり」であると描かれます。でも、過去のNHK大河ドラマにあったような私の大嫌いなフレーズ「戦は嫌でございます~」に感じられるような不快感はありませんでした。

 

平家の陣は赤い幕

 

戦で戦う、当時の武家としては当然の生き方にどうしてもなじめず、でもそれを押し殺して一度は頑張るけど、脱落して、最後は出家して補陀落渡海(入水)の道を選ぶ維盛。心折れて結局何も為せず、逃げ続けて、敗北者として死ぬ。こういう人、きっといたんだろうなあと思いますし、現代の視聴者が感情移入しやすい人物像かと思います。

 

びわと維盛(右側)、最後の邂逅

 

また、びわもそんな維盛の「逃亡」を(一応は止めようとしますが)、そう強く反対しないのですよね。その弱さを受け止め、見届けて後の世に語り伝えることを選びます。ここは印象的でした。

 

義経の人物像

このアニメは『平家物語』なので、源氏方はそんなに描かれませんが、義経は短いながらも冷酷で戦術の天才として登場していました。民間人、非戦闘員の命なんてなんとも思っていない感じ。

 

自分の義経像から違和感ない

 

良く「義経は卑怯だった」説で出される、船戦の時に(非戦闘員であった)船を漕ぐ水夫(かこ)を弓で射るよう指示したシーンも作中でありました。当時、水夫を攻撃の的にすることはありえないことでした。ただ、このように義経が指示したという信頼できる記録は実はないとのことですが…

この作品の義経なら、『平家物語・延慶本』三草山合戦のくだりで書かれている「例の大だい松はいかに」発言はしそうですね。合戦時夜間暗いので、松明(たいまつ)代わりに周辺の民家に放火するんです。「いつものあれ、やっとく?」というノリ。他にも、「邪魔だから」とか、大軍がいるように見せかけるために民家を燃やしたことがあったようです。

これは、義経が特別極悪非道だった訳ではなく、当時の武家たちの常識だったようです。酷い話ですけどね。

 

大原御幸について

アニメ最終回『諸行無常』で見て、初めて平家物語における後白河法皇の「大原御幸」に違和感を持ちました。建礼門院側からすると、後白河法皇は「不倶戴天の仇」「今更おめおめと何しに来た」と牙を剥いても良い存在かと思います。

 

大原御幸のシーン

 

でも徳子は、結構穏やかに応対しているんですよね。この辺の心理を小説にしたら面白そうですが、永井路子さんの短編に丁度あるようです。いつか読みたい。

 

アニメでは法皇は、「わしは三種の神器さえ戻れば、平家を滅亡させるつもりはなかった」と言っていましたが、嘘つけ!です。あんなに一緒に(今様の)セッションしていた資盛の嘆願もスルーして、本当に碌でもない人物でした(ほぼ史実どおり?)

 

まとまりもなく語りましたが、大変完成度の高いアニメ作品でした。見て良かった。

 

後世のびわ

 

それでは、また!

高田崇史先生が書く佐殿(源頼朝)の人物像

吉野家の元取締役の件は残念ですね。あれは、客ばかりか自社で取り扱っている製品まで馬鹿にしていたことが最悪でした。売り手が愛していないモノを誰が食べたくなるでしょうか。

 

さて、大河ドラマ『鎌倉殿の13人』や、アニメ『平家物語』のせいで思い出した小説『QED ~ventus~ 鎌倉の闇』について簡単に語ります。

 

この本好きなんですよ

 

 

注:以下、高田崇史先生の『QED ~ventus~ 鎌倉の闇』について盛大にネタバレしています。

 

私は、昔は鎌倉が好きではありませんでした。子供の頃、親に連れて行ってもらいましたが、全体的にジメジメして陰にこもった印象があり、本書に出てくる銭洗弁天等も、どこが良いのかと思うくらい。

 

おまけにこれも連れられていった鎌倉宮(大塔宮)では、護良親王後醍醐天皇の皇子。鎌倉宮の祭神でもある)が幽閉されていたという土牢がおどろおどろしい印象で…野外、しかもあんなジメジメした(私の憎悪する)ナメクジが沢山いそうなところに何か月も閉じ込められていたなんて。

 

Wikipediaより引用

 

(実際には親王は、この土牢ではなく塗りごめた土蔵の中に幽閉されたという説もありますが、この時はそんな知識も無かったです)それだけでも涙目だというのに、当時土牢のそばにあった立て看板の絵図がトラウマでした。護良親王が殺される時か、怨霊となった後か、幽鬼のようなお姿の絵が描かれていて、夜おトイレにいけなくなるレベル。

 

前置きが長くなりました。

 

だから、『鎌倉の闇』で、何故鎌倉に幕府が開かれたのかという話には(自分には)説得力がありました。当時の鎌倉―鶴岡八幡宮周辺は、ぬかるみが酷いし、飲める水が乏しい(鉄分が多い)碌な場所ではなかったとか。そんな場所を何故頼朝が選んだのか?否、佐殿は「こんな場所しか与えられなかった」。

良く言われるのが、鎌倉は3方を山、1方を海に囲まれた要害の地だという説ですが、逆に頼朝を閉じ込めるためにこの地が選ばれたと。

 

白旗神社Wikipediaより引用)

頼朝は、坂東の御家人達の旗頭として担ぎ上げられました。そして、旗頭は「お飾り以上の意味はない」。反平家としての挙兵時も、源氏の御曹司という体裁ではありましたが「失敗したら腹を切らされる」立場でしかなかった。

 

高田史観では、頼朝は北条氏達坂東武者の傀儡でしかなく、とにかく立場が弱いものとして描かれています。

 

高田先生の佐殿は、(私の中で)どうしてもこのキャラクターにかぶってしまいます。

 

 反平家の挙兵もこんな感じだった?

 

(『スティール・ボール・ラン』1巻(集英社)より引用/以下画像も同様)

 

そう、スティーブン・スティール氏です。この操られ感。

 

凄く佐殿感ある

 

気が進まないなんて言えない、消されるかもしれないのだし。旗頭として自分の役目を(死に物狂いで)全うするしかない。

 

日本史上初の武家中心の体制づくりもこんな感じだった?

 

でも内心ガクブル。

 

嫁に泣きつきます

 

勿論、スティール夫人=後の尼将軍 です。

 

政子に「大丈夫よ佐殿/自信を持ちなさい……ガンバルのよ/あたしのかわいい人」とか言われる源氏の棟梁… ハイ、これを載せたいためだけに今回の記事を書きました(笑)

 

ただ、これはあくまで高田崇史先生から見た(そして私がウケた)頼朝像です。史実の佐殿がこの通りだと主張したいわけではありません。卓越した政治センスの持ち主だとか、冷酷な政治家だとか、政子のスパダリだとか、色んな頼朝像があって良いと思います。

 

それにしても、QEDシリーズは、タタルさんの歴史蘊蓄を奈々君と一緒にびっくりして聞くのが楽しいのですが、巻を重ねるごとに現代の事件がショボい添え物になる一方。この『鎌倉の闇』も、そう。もう歴史蘊蓄だけで完結させても良くないですか?先生。

 

 

それでは、また!

『天上恋歌 金の皇女と火の薬師』5巻 感想

ウクライナ侵攻の報道に日々心折られているのに、大河ドラマ『鎌倉殿の13人』第14回で上総広常が…あの手習いの話が、ここに結実するとか辛すぎ(※褒めてます)。せめて創作の世界では救いが欲しいです…(涙)

 

さて、先日4/14に発売された、青木朋先生の中華歴史漫画『天上恋歌 金の皇女と火の薬師』5巻のとりとめのない簡易感想です。

 

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表紙は円珠♪

 

評価:★★★★★(5つ★満点))

 

 

今回一番印象的だったのは、金のアイラパパや叔父さん、お兄さんズが首からかけている装飾品が、アイヌタマサイシトキに似て見えることです。。良く見たら、着物やゲル内の敷物の文様もアイヌのそれに似ています。アイヌは、かつて樺太や大陸と交易をやっていたというから、共通するものはあるのかな?

 

中央アジアのカザフとかでも、アイヌのそれと類似した渦巻模様が見られるらしいし(世界ふしぎ発見!だったかな?TVで見た)、下記リンク先にあるように、サハリンや北東アジアの各地でも類似した伝統文様が見られるそうです。こうやって見ると、「みんな繋がっているんだなあ」と思います。

 

irohacross.net

 

そして、某キャラクターについて。「私はどこにも行けない」「死ぬまで一生宮殿の中でひとりぼっち…」こういうことを作中人物に繰り返し言わせるということは、すなわち…

 

ちなみにウサギは、多産なところから古来「(子孫)繁栄」「豊饒」、そして「性」のシンボルとされています。可愛い顔して、ウサギは哺乳類随一の繁殖力を持つのだそうです。雑誌のプレイボーイのロゴマークがウサギなのも、その性欲の強さが理由ですって…

 

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ウサギが繋ぐ縁

 

ところで、ウジュ兄さんは後宮の敷地内で狩り(食料調達。犬同伴で)していたということで良いでしょうか?しかも皇帝一家以外"男"は入れないエリアで。禁中のセキュリティはどーなってるの?とつっこみたいです。

 

相変わらず(主要なストーリーの内容よりも)細かいところに目が行っています。『水滸伝』は未読ですが、同作品でおなじみの人物達が出てきたもよう。童太尉(童貫)、宦官なのに顎に髭が生えている…?と思っていたら、史実なのですね(驚)。え~、ちゃんと”とって”いなかったのではないですか?

 

他に(今更ですが)気になったのが、下図に描いた、冠に付属した横棒部分。

 

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皇帝もこの横棒ついています

 

これ、本当に当時こんな長さのもの着用していたんでしょうか?あちこちにぶつけるでしょ?絶対。振り向いたら(同じもの付けている)他の人とガキッ‼とぶつかるに決まっている(私ならそうなる)と気になって仕方がありませんでした。

 

主要なストーリーの内容について書いていませんでしたね。

今回は、火薬の重要な素材、硫黄の宋での調達について等、また火薬がいよいよ実戦に投入されていく流れなど、なかなか良かったと思います。皇帝と皇太子との不仲は、単に讒言だけではなくお互いの気質の違いからくるという描写や、康王はやっぱり父帝の子だと思わせるところ、金の状勢、進行する陰謀等、面白く読めました。勿論、描きこみの美しさも堪能しました。

 

しかし、皇太子殿下、不憫…それにしても、皇太子になっているくらいだから、母后の実家の勢力はそれなりに強いのではないかと思います。そのあたりの描写が欲しかったかな。あれでは、天鼓院の皆さんしか味方がいないように見えてしまいます。

宋の時代、火薬をどう調達していたかは、下記の3巻感想にて自分も書いています。

 

aoumiwatatsumi.hatenablog.com

 

はぁ、今晩は大河ドラマショックから気分はお通夜です。

 

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近所に咲いていたボタン

 

それでは、また!

『プルミエ・ミュゲ』水木杏子原作 英洋子作画 感想

1月からひいひい言っていた年度の変わり目の忙しさも、後ちょっとで一段落する…かもしれません。

 

さて、水木杏子先生(『キャンディ・キャンディ』の原作者!)原作の少女漫画『プルミエ・ミュゲ』を一気読みしたので、感想を書きます。斜め上過ぎる話でした。

 

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コミックで全4巻

 

 

評価:★★★★☆(5つ★満点))

 

「スキマ」というサイトで全館無料で公開されていたのでつい…

 

www.sukima.me

 

あらすじ

花々の咲き乱れる、フランスのとある小さな村。主人公の少女、シェビィ(シェブル・クレルモン)はハンドボールに夢中(チームのキャプテンのレイモン(♂)にも夢中)な16歳。天才調香師(香水をはじめとする”香り”の製品を調合するスペシャリスト)のギョーム・クレルモンの娘ながら、花の香りには無頓着。母がいない生い立ちは訳アリですが、父や祖母との家庭で、のびのびと育っています。

 

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ヒロインのパパは香水作りの天才

 

アクティブに見えて、意中の人のレイモンにはガンガン行けないシェビィ。「私の気持ちに気付いてくれないかしら」と意外とモジモジしたところがあります。

 

ある時、幼馴染のポール(シェビィに片想い中)から、町で彼女そっくりな男の子の存在を聞いたシェビィは、以前からの疑念を元に、「母は生きていて、自分には片割れの双子のきょうだいがいる」と確信を持ちます。

そんな中、あることがきっかけで、その瓜二つの容貌の少年、フォン(フォイユ・デュポール)に出会います。年も同じ、でも誕生日は一致しないし、良く見れば髪の色も微妙に違います。そして、彼の父は「海で死んだ」、と…

しかし、二人の名前は”シェブルフォイユ”(スイカズラ)からとられたと確信したシェビィは、やっぱり自分達は生き別れの双子だ!と確信します。フォンが見せてくれた亡き父の写真は、若い頃の父そのものでした!

「何故私たちのパパとママは別れたの?」そうだ、二人を改めてくっつけましょう!と一人はた迷惑な目標を掲げ、熱くなるシェビィでしたが…(フォンは冷めています)

 

感想

いや、(色んな意味で)凄い話でした。

 

シェビィの住む村、フォンのいる町を舞台に、生き別れの双子(いかにも昭和の少女漫画好みのシチュエーション)の再会をめぐるすったもんだを中心に、二人それぞれの恋模様が描かれるとばかり思っていましたが、その舞台が想定外に大きく動くスケールの大きい話でした。

不倫…犯罪…家出…親の再婚話…男女の行き違いに、深刻な負傷と、ぶち込まれた要素もなかなか想定外。

 

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二人の名前はスイカズラからとられた

 

走っている列車に飛び乗るのは(いくらカーブで減速しているからって)ヤバすぎです。この時代、良くこんな描写が許可されたと思います。

 

某キャラの転落話も、オトナすぎました。シビア!シェビィとフォンの「親たち」のいきさつも、え?それは当時の少女漫画ではいいのこんな描写?とハラハラしました。

 

フォンにぞっこんな少女、マルヌがもう本当にキツイ性格の子で、流石、水木先生、イライザを産み出した方だけある!(笑)

 

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バラの香り、大好きです

 

シェビィの恋バナは、当初想っていたイケメンのレイモンが相手と思わせて→いつもそばにいた幼馴染のポールの良さに気付いてそっちとくっつく…程度の話かと思っていましたが、別の人物も入り交じり、ややこしくなります。その上、まさかシェビィとフォンとが「男女として意識しあう」成り行きとなるとは。

 

「でも二人は双子(きょうだい)」。愛し合うのはタブー。

 

そしてタブーとなる要素が壁となればそれだけ、恋愛ものは狂おしく燃え上がります。何かというと、「私たちは双子…」とウジウジするのもこの手の話のお約束。

 

それをあんなウルトラ強引な設定で解決するとは。実際にああいう事例は無い訳じゃないようですが、いくらなんでもご都合主義的。どれくらい強引かというと、諸星大二郎先生の『暗黒神話』くらい強引。水木先生としては、ミスリードを誘うストーリー設定のつもりだったでしょうが、読者の中でこの展開を予測できる人はまずいないでしょう。

もう、ポカーンとして結末は「良かったねー(棒)」でした。

 

それに、実質的に彼ら二人は●●と言っていいので、「私たち●●●よ!」と安心し合うのは違うと思います。

 

まあ神(作者)がいいと言っているので、読者としては文句はつけられないのですが。

タイトルの『プルミエ・ミュゲ』とは、フランス語で「初咲きのスズラン」という意味だそうです。

 

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スズランは毒があるんですよ

 

それでは、また!

3月の食の忘備録

以前ブログに書いた、職場がお祝い用にいただいている胡蝶蘭の鉢の件ですが、飾る時期が済んだら、1鉢いただけることになりました゚+。:.゚ヽ(*´∀`)ノ゚.:。+゚ なんとか育てられれば良いのですが。

 

さて、2022年3月の食の記録です。 

 

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砂糖を全く使わない肉じゃがです

 

こちらのレシピ↓で肉じゃが作りましたが、味わい深いです。

www.ilpleut.co.jp

 

肉じゃがの余りを具にしたオムレツが好きなので、今回も作りました。

 

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余った肉じゃがを具にします

 

ニラ醤油というものが流行りらしかったですが、作ってみました。

 

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ピーナッツを加えるのがポイント

 

肉にも、魚にも豆腐にもかけると合います。

 

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何にでも会う感じ

 

春に出てきた、蕾菜という野菜を豚肉と卵と炒めていただきました。ピリッとした辛みが美味しいです。

 

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紹興酒と一緒にいただきます

 

大量のネギをいただきました。

 

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こんなに

 

小池田マヤ先生の『令和の家政婦さん2巻』であった、「ネギのコンフィ」作りました。オリーブオイルでニンニクと一緒にとろ火で長時間煮込んで、冷めたらディルやレモン、ケイパーを加えます。

 

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分かりにくいでしょうがネギが入っています

 

白ワインと合うんです、これが。

 

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(´∀`*)ウフフ

 

 

ネギ、まだまだ余っていたのでベーコンとグラタンにしました。

 

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見えないけどネギがいっぱい

 

水切りヨーグルトを使ったトーストをクッ○パッ○を参考に作りました。トーストにマヨネーズ塗った上に、水切りヨーグルトを塗って、インスタントコーヒーをかけてトースターで焼くという…

 

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不思議なお味でした

 

ロシアのウクライナ侵攻には怒りを覚えますが、ロシアの文化には罪はない!という訳で、亡命ロシア料理、「帰れ、鶏肉へ!」を新玉ねぎで作りました。

 

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スープの素とか入れてません

 

cookpad.com

 

この料理、水は全く加えず、(新)玉ねぎと肉の水分だけでこんなに水が出るのです。とっても旨味が出て美味しかったです。

 

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水切りヨーグルトを添えていただきます

 

カブや白菜も、終わりの時期ですね~、という訳で、蕪蒸しや白菜のオーブン焼きを楽しみました。

 

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分かりにくいけど蕪蒸し(フキノトウ入り)

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ヘルシオで焼いた白菜

 

『刷毛じょうゆ 海苔弁山登り』の鮭弁当(1,000円以上するのり弁!)を出先で購入。

 

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職場でいただきました

 

お彼岸の墓参の帰りに、ベンガルタイガーにてランチ。人気が分かるお店でした。

 

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映える盛り付け…

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いちご入りラッシー

 

春らしいビールが売られていたので、晩御飯に焼肉といただきました。

 

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桃の果汁入り!

 

年度末も終わり、自分お疲れ様会として、八丈島料理の居酒屋へ。

 

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八丈島産焼酎がずらり

 

吉本ばななさんの短編『情け嶋』を読んで、焼酎「情け嶋」が飲みたくなったのですよ~、でも突き出しの枝豆や、明日葉天ぷら(衣部分でお腹いっぱい…)のお陰で、島寿司までいけずに敗退。トシですね。

 

 

年度初めも、しばらく忙しい日々で、ゆっくり花見なんてとてもできない状態ですよ~(泣)ブログ書いていますが(笑)

 

それでは、また!

新型コロナウイルス ワクチン接種(第3回目)

本日墓参りしてきましたが、桜、桃、レンギョウハクモクレン…と咲き出して、綺麗です。

 

さて、先日地元の病院で新型コロナウイルス ワクチン接種(第3回目/モデルナ社製)を受けて来たので、その記録です(・∀・)ノシ

 

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菜の花~

 

今まで、1・2回目は、ファイザー社製ワクチンを打っていたけど何の副作用もありませんでした。だから、今回も朝接種したら午後は在宅勤務できるっしょ~、と予測していました。結局、当日は朝にワクチン接種→精神科(発達障害の方の通院)→午後から在宅勤務…となりました。

 

ただ、発熱こそしなかったのですが、なんとな~く、肌の表面が過敏になっている?寒気のような感じが当日から翌日(土曜日)にかけてありました。翌日も、予定があったので都内まで出かけたのですが、それ以外は大事をとって、寝ていました。

 

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桜も早く咲いている樹があります

 

…やれやれ、これで簿記2級の合格時期が遠ざかります(;'∀')

 

言い訳ですが、職場から指示があって、取得しようとしているわけではないので(完全に自発的な勉強なので)「この日までに合格しないと困る」というものではないのですよね。ここのところずっと、仕事や腰の治療で(とても)忙しかったし、メンタルも不調でしたし。どうしても仕事優先になってしまうので、あまりこだわらないようにしようと思います。お金は当初の予定よりかかってしまいますが、もうトシですし。

 

ただ、そういっているといつまでたっても合格できなくなる恐れがあるので、だらけすぎないようにします。「簿記2級に合格したら○○を始める」という楽しみを用意していますし。

 

さて、このコロナ禍はいつまで続くのでしょうね。関東外まで旅行にも行きたくなってきました。

 

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春が来たのは嬉しい

 

それでは、また!

『ラオスにいったい何があるというんですか? 紀行文集』村上 春樹 著 感想

年度末進行と簿記2級の学習と、腰の治療とでわたわたしております。

 

さて、村上 春樹さんの『ラオスにいったい何があるというんですか? 紀行文集』を読んだのでその感想です。大体1日で読めちゃいました。

 

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ブックオフでゲット

 

評価:★★★☆☆(5つ★満点))

 

 

実は、丁度「ローマに行きたああああああい」熱がぶり返して(※コロナ禍のこの状況は無視)、家のローマ関係書籍を漁っていました(←勉強しろ)。

 

それで、ここ数日、『遠い太鼓』を引っ張り出して、ローマが出てくるところをめくっては読みふけっていました(←勉強しろ)。この本、良いんですよね、イタリアやローマの魅力だけでなく、マイナス面もきっちり書いていて。当時はこの作家も海外では無名で、イタリアやギリシャ等ヨーロッパに長期滞在していたその暮らしぶりも羨ましいです(大変そうだけど)。

 

 

村上 春樹の著書は、小説よりも、エッセイや読者との質疑応答の本が好きな私。『雨天炎天―ギリシャ・トルコ辺境紀行』とかも、何度読み返したか分かりません。

 

ラオスにいったい何があるというんですか? 紀行文集』の感想に戻りますが、一読しての印象は、「すっかり著名人となって、御大尽旅行されているな」というものでした。

今の村上 春樹は、世界中にファンがいる超有名人。本書では、アメリカの書店で買い物したら、気が付いた店員さんに沢山の本にサインを求められ、NYのジャズ・クラブでライブを聴いていたら出演者に「あなたの本を読んでいますよ」と声をかけられたり。交友のある作家仲間のポール・セロー氏(アメリカ人)のおすすめの(超一流)レストランに行って舌鼓をうったりしています。小説にトスカーナ産のあるワインを(好意的に)書いたことがきっかけで、醸造しているワイナリーに取材して、ご馳走になったりしちゃいます。

 

収録のエッセイの多くはJALのファーストクラスの機内誌に掲載のため書かれたものなので、それもあってブルジョワ臭がします(笑)

オレゴン州ポートランド郊外のNIKEの本社敷地内にあるジョギング・コースでジョギングをさせて貰う体験は、掲載誌からのオファーだったかもしれませんが、きっと「世界的な作家 村上 春樹」のネームバリューがあっての許可だったのではと推測します。

 

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春樹といえばジョギング

 

でも、それを非難しようとかそんなつもりはありません。自分の実力で勝ち取った現在だし、そうでなかった昔には二度と戻れないのだし。春樹は悪くはない、です。

 

ただ、過去の旅エッセイ集みたいに、読み返しはしないだろうなあと思いました。

 

「東京するめクラブ」の限定復活・熊本編もあったのですけどね。「東京するめクラブ」とは私の好きな編集者・写真家の都築 響一さん、スタイリストの吉本 由美さんと村上 春樹さんの3人で結成した、「旅ユニット」というべきもので、ちょっと妙な、変わったところへ行って楽しむゆるい活動をされていたのですが、その成果は『東京するめクラブ 地球のはぐれ方』という本にまとめられています。

 

 

今回は、掲載がCREAだし、なんというか、オシャンティーな感じの記事で、あまり面白いと思えませんでした。文庫版では、熊本での写真は碌に掲載されていなかった(CREA掲載時にはもっとあった筈)のも減点対象です。海の上に建つ廃校となった小学校の建物とか、阿蘇で大量のトピアリー(常緑樹や低木を刈り込んで動物やキャラクターの形に作った造形物)を作るトウモロコシ屋さんとか、写真で見られないのが残念でした。

 

それでは、また!