青海のブログ

本や映画、展覧会の記録と感想等。時々、発達障害について。

孤独死まっしぐら!?

ベルセルク』の作者、お亡くなりになったんですね(´・ω・`) ご冥福をお祈りいたします…

 

さて、記事タイトルはこのブログの名前を考えていた時、当初候補として上がっていたものでーす。流石にきついかと思いやめましたけど(笑)

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売られていたマツバボタン


自分はガチで孤独死するだろうと思っているので、これがピッタリかな?と。

 

【目次】

 

孤独死はそんなに悪いものか

自分は、孤独死はそう悪いものとは考えていません。

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チェリーセージの人気の品種「ホットリップス」


死んだことが無いので、死に際にいやだいやだ独りで死にたくない…!!ともがくかもしれませんが、誰かに看取ってもらうって、今は相当に贅沢じゃないのかと思います。亡き父は、最後に緩和ケア病棟で亡くなりましたが、死んだ瞬間は、夜中で家族は勿論、看護婦さんも巡回の谷間でそばにはおらず、独りで逝ったと言えますし。

 

でも独りで誰にも看取られず死ぬって、そんなに悪い嫌なことなんでしょうかね、最後は苦しいし心細いでしょうが、死ぬんだから苦しいのはしょうがないですし。
孤独死を忌避する心情がいまいち分からないのは私が自閉症だからでしょうか……


老衰で、孤独死する?頃、どうしているかな。ブログは続けている?(笑)

 

科学の進歩を待ちましょう

孤独死が良くない点は、発見されるのが遅れて、腐乱死体になるところ。片付ける人達、物件の大家さん等関係者が大変!

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一つの株で、多様な色に咲いている紫陽花(*´ω`*)

でも、『ミステリと言う勿れ』で言われていたように、科学の進歩で死亡後早めに分かるようなシステムができれば、これは解決されるし、孤独死自体が悪いということは無いんじゃないかと思います。

 

 

ニーズは充分ある気がします。私が(途中で事故死や病死が無い限り)老衰で亡くなる頃にはこういった技術は間に合うと楽観的に思っています。

 

後は、死ぬ間際までの介護をどう受けるかですが、過去にある方が、私が老いた頃にはAIに介護してもらって亡くなるシステムが確立しているだろうと言ってくださっていて、これは結構現実的な話だと思っています。そうなったとしても嫌だとは感じません。むしろ楽しみです。話し相手にもなってくれるレベルなら、なお良し(笑)

 

想像したからこそ実現した

AIに最後を看取ってもらう話は、戸田 誠二先生の漫画『スキエンティア』に収録の短編、「ロボット」は、まさにそういう話でした。後、山本 弘先生のSF小説『アイの物語』』収録の「詩音が来た日」もありますね。どちらもとても良い話でした。

 

 

アイの物語 (角川文庫)

アイの物語 (角川文庫)

 

 

え?そんなの架空の話に過ぎないですって?

 

そうでしょうか。先駆的なSF作家のジュール・ヴェルヌがこういう言葉を残しています。

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代表作『八十日間世界一周』『海底二万里』等


 

「人間が想像できることは、人間が必ず実現できる」(Tout ce qu'un homme est capable d'imaginer, d'autres hommes seront capables)

 

実際、ヴェルヌの小説『月世界旅行』は、アポロ計画を予言したと言われています。

 

 

「月に行こう」と思った人がいたから、実現したのですよ。

 

そもそも今飛行機や自動車やコンピュータやロボットがあるのは、人が想像したからです。「空を飛ぼう」と考えた人がいたから、トライし続けたから飛行機と言うものが生まれたんです。きっとそういう人達は、時には うはは、ば~か!と言われることもあったでしょう。でも諦めない人もいた。

 

ライト兄弟が世界初の有人動力飛行に成功したのは1903年、今から120年弱前の話。たった120年足らずで"今"はどうなっていますか?宇宙旅行の話も出ていますよね。今、無人運転の自動車も実現しつつありますが、昔は完全にSFの中だけの話でしたよ。

 

そりゃあね、インターネットや航空工学の進歩は、軍事と密接に関係しています。人間ですから沢山沢山酷いことや悪いことを考えたり実現したりもしますけど、ね…

 

ちなみに、アニメ『ふしぎの海のナディア』は、ヴェルヌの『海底二万里』と『神秘の島』を下敷きにして作られています♪

 

 

自分が亡き後の植物が心配

私としては、独りで最後なんて嫌とか、そんなことより(もし死ぬ間際までへっぽこガーデニングをしていたら)、植物達の始末をどうすれば良いかということが気になります。寝たきりになったら世話が出来るか心配ですし、そして自分が亡き後"ゴミ"として廃棄されるのは悲しいです。

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また新しい仲間が増えてしまった

 

飼い主亡きあとのペットの里親探しってありますが、植物でもニーズが結構あるようで、それに対応したビジネスを立ち上げられたところもあります。

 

うろ覚えですが、吉本ばななさんの小説『キッチン』で、病院に入院して死にかけている人が、自ら希望して病室に持ってきて貰った鉢植えを家族に持ち帰ってと泣きながら頼んでいたエピソードがあったんですよ。(もう自分は死んでいくから)持って帰って、と懇願するんです。あれを思うと、死期が分かったら、植物達を手放さなくてはならないのかな…と暗澹たる気持ちになります。

 

キッチン

キッチン

 

 

な~んて、年を越して世話する植物が、シャコバサボテンくらいしかないというのに(後は枯らした(´・ω・`))何心配しているんだと自分の妄想大魔神っぷりに呆れます\(゜Q。)ホエー


それでは、また!

『フラワー・フェスティバル』萩尾 望都 著 感想

やっぱり梅雨突入みたいですね…

九州大丈夫かな、(´・ω・`)ショボーン


さて、萩尾 望都先生のバレエ漫画、『フラワー・フェスティバル』の読書感想です。

 

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右から主人公のみどり、サンダー

※注:盛大にネタバレしています
評価:★★★★★(5つ★満点))

 

フラワー・フェスティバル (小学館文庫)

フラワー・フェスティバル (小学館文庫)

  • 作者:萩尾 望都
  • 発売日: 2000/07/15
  • メディア: 文庫
 

 
【目次】

 

概要

バレエに打ち込む女子高生の主人公が、夏休みにロンドンのバレエスクールに参加し、舞台の外の人間模様にすったもんだしながら成長する少女漫画作品です。1988年~1989年『プチフラワー』にて連載されました。

あらすじ

横浜のバレエスクールに通う日本の女子高生のみどりは、イギリスへピアノ留学した血のつながらない兄の薫に密かに片思いしていました。

ロンドンの名門・フローラル・バレエ・スクールに就職していた薫の縁で、みどりは演出家のガブリエルに声をかけられ、スクールのサマー・キャンプに誘われます。バレエに反対する(血のつながらない)母・園子を説得して、日本のバレエ仲間達とひと夏のキャンプに参加するみどり。


ガブリエルが演出する新作公演「十二宮」のスピリット役に抜擢され驚きますが、パートナーとなるサンダーは厳しく、また薫を中心とした人間模様が大変なことに…?

 

感想

これぞ少女漫画

「気持ちが変わるのは いままで見えなかったものが ……見えてくるからだ」

 

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薔薇~

これぞ少女漫画!といった文句なしの傑作です。私は萩尾作品はあまり読んでいませんが、先生の作品にしては余り重くならず、後味もかなり良い印象です。

メインの2人、みどりとサンダーがかわいいかわいい。

絵も、この頃の萩尾先生の絵はとても素晴らしい。美男美女が出て(園子さんも何気に美人だし)花やレースがふんだんに描かれて、美しいバレエシーンの数々。萩尾先生、バレエ好きなんだろうな、何より漫画が大好きなんだろうなということがひしひしと伝わってきます。イブの衣装がいつも花柄というルールも好き。


兎に角、読者としては名匠の力みなぎる仕事をただただ享受して、大船に乗った気分でこの世界を堪能すれば良い。絢爛たる作品世界に、万雷の拍手を!!

 

地味に論理的に話を構築

とはいえ、本作は安易な夢物語、少女の願望充足型の話になっていません。

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お花には飽きません

地味に、さりげなく登場人物や状況の設定を積み上げて、ストーリーへ無理なくつなげているのは流石と思いました。

ヒロインのみどりがの家族ステップファミリーであるということ、血のつながらない兄の薫の縁で、イギリスのバレエ学校のサマー・キャンプへ参加する流れとか。

みどりが1/8オランダの血が入っていて、日本人離れしたリズムの持ち主であることで、ガブリエルの目に留まること。

また、いきなりロンドンのキャンプに参加して何とかなるみどりの語学力はさりげなく説明されています(生さぬ子を間違いなく育てようとした母により「授業の半分は英語」で実施されるレベルの高校へ入学している)。

サンダーがちょっと融通が利かない位の真面目な性格な設定(ヨーロッパツアーに行かずに留守番していた→みどりと組むことになる)とか。

 

みどりが抜擢されるのは、主役(プリマ)ではなく、案内役(でも非常に重要な役)のスピリット、それも学校一のダンサー・レイチェルの代役、という設定がまた、「ありえるかもしれない」感があって秀逸。いきなり主役へ抜擢!では、ちょっと荒唐無稽な感じがしますから。

それから、日英ダブルの薫の魔性っぷりは、みどりが到着直後のパブで早速説明されます(笑)

見事な群像劇

本作は、日英で沢山の登場人物達が出てきます。

これだけ多くの登場人物を作り描き分けて、その複雑な相関関係と共に、それぞれのキャラクターや人生を垣間見せる手腕は見事。登場する人物達に、皆必然性があります。

蘇芳さんやレイチェル等、程々にイヤなところやしたたかなところがある描き方も好きです。玉子ちゃんも素敵(笑)

 

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何気に大物でした

 

しかし、「下手すると、みんな身内同士」って、小池田マヤ先生の『うめぼし』みたい(笑)

うめぼし (1)

うめぼし (1)

 

 

バレエへの愛

私はバレエはあまり良く知りませんが、本作は萩尾先生のバレエへのふんだんな知識と愛が充実しているので、「十二宮」の様子も、実際の舞台を見せられているようで楽しかったです。「十二宮」自体が、バレエの歴史と未来を見せる内容なので、バレエ好きにはたまらなそうな演目です。

後、連載時の表紙絵なんでしょうが、各回の扉絵で結構、群舞を描かれているのが印象的でした。萩尾先生は、ソロで踊るメインダンサーだけではなく、あらゆるバレエの要素が好きなんだろうな…。

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『フラワー・フェスティバル』小学館文庫 203ページより引用

一見"ありがち"なストーリーですが、萩尾望都先生ならではの作劇術・画力がさく裂した名作でした。おススメです。

 

それでは、また!

『彩なす家オンライン読書会』「5/16テスト版オンライン推し本披露会」感想

なんと…7月下旬から馬場のぼる展開催ですと?
絶対行きます。練馬区立美術館、いつも面白い企画だなあ。後は、コロナ禍の影響がないか心配…

 

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日差しもきつい季節へ

さて、本日は『彩なす家オンライン読書会』のオンライン推し本披露会へ参加したので記録と感想です。

【目次】

 

『彩なす家オンライン読書会』とは?

私が以前から参加していた、『彩ふ読書会』の姉妹コミュニティとして、立ち上げられたオンラインに特化された読書会です。あやなすや、と読むそうです。

本日、はテスト版としてオンライン読書会を実施して、来月6月から本格的にオンライン読書会を定期開催予定だそうです。

『彩ふ読書会』とは、関西・関東各所で開催されていた読書会です。このコロナ禍で、リアルの開催は休止中。それで、主催者の方やメンバーの方々によるイベントはオンラインでちょくちょく開催されていましたが、来月から、本格的に『彩なす家』でオンライン読書会をスタートされるようです。『彩ふ読書会』は、元々リアルでの交流をメインに始められたものなので、『彩なす家』とは分けられたいようです。

iro-doku.com

オンライン読書会へ参加して

読書会はオンライン開催ですので(Zoomを使用)、人数の多い問題には、チームに分かれて進行する、という対応をされていました(「ブレイクアウトルーム」という機能)。

 

まずZoomで入室して、主催側から会やZoom操作の説明等→各チームの部屋へ分かれて入る→読書会実施(一人当たり約10分でそれぞれ推したい本を紹介する)→時間になったら、一度「ブレイクアウトルーム」から退出(最初に入室した場所に戻る)→振り返り…という流れでした。

 

今回私が参加したBチーム参加者さんの推し本は以下の通りです。

『大泉エッセイ 僕が綴った16年』大泉 洋 著
『プリンセスお母さん』並庭 マチコ 著
『無能の鷹』はんざき 朝未 著
『ブルーロック』金城 宗幸 (原作), ノ村 優介 (画)
『パイは小さな秘密を運ぶ』アラン・ブラッドリー 著

 

今回漫画のご紹介が多かった印象です。

また、最後のご紹介本の著者、アラン・ブラッドリー氏は、カナダ人で、70歳にして(ミステリ)作家デビュー、デビュー作がこの『パイは小さな秘密を運ぶ』で、イギリスを舞台にしているけれど、この小説で貰った賞の授賞式に出席するまで、かの国へは行ったことがなかった…という話が印象的でした。


私は今回、『一度きりの大泉の話』(萩尾 望都 著)を紹介しました。

 

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紹介時間が許せば語りまくりたい

 

aoumiwatatsumi.hatenablog.com

 

もっと時間が欲しかった

自分の推し本紹介ですが、10分では上手く説明できなかったです…(;´Д`)
ある程度以上の年齢の方(特に女性)には、「萩尾 望都」「竹宮 惠子」がどんな人達か、「大泉サロン」や「花の24年組」が説明抜きで通じるでしょうが、今回の参加者さん達は、皆さんお若かったようで(苦笑)。

その辺りから説明していたら、時間がなくなりました。私もあらかじめまとめておいたらもっと上手く説明できたかな…と反省です。

これが、どれだけアクが強い本なのかが、伝えられなかったのは残念です。来月以降の読書会に参加していく際の教訓にしたいです。

 

オンライン読書会の長所

まず何より、今のコロナ禍では、密を避けて読書会へ参加ができること。
また、何といっても、「場所の制約」が無いことです。例えば、関西在住者と関東在住者が一緒に話せること。Zoomの画面共有という機能で、紹介する本を画面で同室の参加者へ見て貰えます。

それに、リアルに例えば東京で開催でも、参加するには各自移動時間・経費がかかりますが、オンラインならそれも不要。読書会の分の時間さえ確保すれば、家を空けることが難しい方でも参加の可能性が高くなります。

 

オンライン読書会の短所

推し本披露をしている時、他の参加者さん達の合槌や表情が分からないので、不安になります。

また、ビジュアル重視の本(画集や絵本、漫画、写真が多い書籍等)は紹介し甲斐が無いなと思いました。表紙は画面共有で見て貰えますが、リアルでの会なら、その場で中も見せながら、如何に自分がこの本を推したかったのか!と見せられます。これは、文字中心の本でもそうで、やはりリアルでお会いしていれば、直にお互いの本を開いて中を見たりして興味をつのらせたりできるので、それが出来ないのは大変寂しいです。仕方がないですけれどね…

 

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画集とか紹介したいです

自分はビジュアル重視の本で色々推したいものが何冊かあるのですが、それは、コロナ禍が終息後、リアルで開催の読書会へ参加した時の楽しみにとっておこうかと思いました。


でも、このような事態でも、読書会を開催していただけて、気軽に参加が出来るのは非常にありがたいことだと思っております。技術の進歩と主催者様、スタッフの方々へは大変感謝しております。(読書会については、以上となります)

 

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色んな花が楽しめて嬉しい季節です

 

これからもよろしくお願いいたします

ところで!この記事で60記事目の投稿となるようです。
ブログを始める時、「まずは100記事書け!」と言う言葉を真に受けて、コツコツ書いています。今年の1月に始めたブログですから、まあのんびりペースですよね(笑)

 

ご訪問いただいた方々や、読者登録やブックマーク、はてなスターくださった方々等、本当に有難うございます。趣味でちんたらやっているブログですが、励みになります。

(^人^)感謝♪ …です!

 

それでは、また!

王昭君 考

九州南部は、もう梅雨に突入だとか、止めて欲しいです…

さて今回は、歴史と美女についてちょろっとと語ります。

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赤い雛芥子は、"虞美人"草でした


以前、某所で王昭君について話させていただいたのですが、大体その再掲です。

古代中国四大美女の一人で、非中華の遊牧民族匈奴の呼韓邪単于に嫁がされた前漢の時代の絶世の美女、王昭君のことです(単于匈奴の君主のこと)。

王昭君についてご存知ない方は、こちらをお読みください。

ja.wikipedia.org

 

日本のお花だと、「王昭君」は、椿や花菖蒲にそういう名のものがあるようですねー。

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これは薔薇

 

王昭君の話は、史実ではどうだったのでしょうか?今に伝わる話は、かなり中華世界の価値観というフィルターがかかっているのではと疑っています。とにかく悲劇のヒロイン扱い、伝承によっては、義理の息子と再婚するのを拒否して自害しただの、悲惨な末路のイメージが強いです。

 

何より漢族の中華思想自分達の国や文化が一番!卑しい匈奴の土地に嫁ぐなんてとんでも無い不幸に決まっている!夫亡き後その息子へ嫁ぐなんて、なんて野蛮!ケダモノ並み!絶世の美女がそんな目にあうのは壮大な悲劇!全米が泣いた!…というような色眼鏡を感じます。

 

大体周りの異民族には『匈奴』や『鮮卑』、『夷・戎・蛮・狄』とかネガティブな字を当てた蔑称で蔑んできた"華人"(自分達は"華人"と名乗る!)の言う事ですから…

中国歴代王朝は、実際は、非中華世界の遊牧民系勢力による割合が高い、という説もありますけど。

 

未読ですが王昭君を書いた小説に、窮屈な漢の宮廷から解放されて、遊牧民の処で、ノビノビと楽しく暮した、と言うものもあるみたいですよ。

王昭君 (講談社文庫)

王昭君 (講談社文庫)

 

 
上記のように、遊牧民族では、レビラト婚という風習を持つところが多いです。寡婦が亡き夫の兄弟と結婚する慣習ですが(『乙嫁語り』にもありましたね)、夫亡き後、義理の息子と再婚することもあるようです。

レビラト婚 - Wikipedia


匈奴にもその風習はあるので、王昭君もそれに従っただけだでしょう。

でもこれが、儒教の価値観では義理でも兄弟の妻(もしくは子の妻)とは近親相姦になる!いかん!と非常にタブーとされています。何て卑しい!と大変この風習を嫌ったそうです。

乙嫁語り 3巻 (HARTA COMIX)

乙嫁語り 3巻 (HARTA COMIX)

 

 
実際のところは、分からないですよね。

 

異文化で苦労はあったかと思います。食べ物や言葉も違うし、匈奴の閼氏(単于の妻)なら、乗馬や家畜の扱いに通じてないと、色々とやりにくいでしょうし。

 

でも、宮中での大勢の女官達の内の1人でいるよりは、嫁ぎ先で大切にされて、幸せだったかもしれません。

…ところで、この中華思想、現在進行形じゃないでしょうか(;^ω^)

 

そんな中華思想に基づく史観に対して、漫画家の青木朋先生が『天空の玉座』や現在連載中の『天上恋歌』にて、非中華民族の魅力を描いておられて、楽しく読ませていただいております。

天空の玉座 6 (ボニータ・コミックス)

天空の玉座 6 (ボニータ・コミックス)

 

 

 

 


『天上恋歌』は、かなりヤバい(実際の)時代をテーマにして描かれているので、どうなるか、かなりワクワクして読んでいます(別にまわし者じゃあないですよ?)

それでは、また!

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雷雨(もう雷が…)後の虹

 

すまんかった

緊急事態宣言延長のため、お目当ての展覧会を開催中の美術館が、5月末まで全館休館…
うう、会期はまだあるけれど、6月にはきっと…行けますよね?

 

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ブルーカールズ(現在) のびのびと育っています

さて、以前購入して(*´Д`)ハァハァと世話していた多肉ちゃん(エケベリア属・ブルーカールズ)が、元気に成長しているのに、みっしりしていた下葉がどんどんしぼんで枯れていく、と書きました。

 

aoumiwatatsumi.hatenablog.com

 

 

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購入当初は、下葉がみっしり重なっていた

 

考えたのですが、それって下図のような理由なのではと考えています(汗)

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緑の物体がブルーカールズ(多肉)のつもり

ネットで見ていると、多肉植物は、あまり頻繁に水や肥料をあげてはいけないそうで(枯れたり変に徒長したりする)、水やりは控え目に!という意見を真に受けて、2週間に1回くらいの頻度に抑えていたんですよね。もう、「葉がちょっとしわしわになるくらいまで、水やり我慢!」というご意見もあり、確かに普通の植物より乾燥気味に管理だろうと思っていたのですが…

 

す…すまんかった。私が間違っていた、ごめん。

 

確かに、今の時期は成長期なので、日光にも積極的に当てています。成長のエネルギー源として、もっとこまめにあげるべきだったようです。

以前、冬に(冬場は休眠期だから水やりは控え目にしないといけないのに)分からないままドラセナやポーチュラカに水をやりすぎ、結局死なせてしまったトラウマがあり、水やりに慎重になりすぎでした。

 

aoumiwatatsumi.hatenablog.com

 

でも、今は春で成長期。また状況は別なんですね、まったく無知で恥ずかしいです。


今は、生産者のページ等を検索して、「春・秋は週1回程度水やり」に切り替えたら、今のところ下葉がどんどん萎れていく事はなくなりました。

でも、必ず週1でやるのではなく、天候や土の乾き具合を見つつ、調整しています。最近も、8日ぶりに水と液肥をやりました。

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肉厚~

しかし、葉っぱが肉厚で、キャベツかレタスみたいな形でいつも美味しそうだな、と思いつつ眺めています。千切って食べてみたい(しませんけど)

ブルーカールズについては、他にもあったのですが、また後日書けたら良いなと思います。

 

それでは!

宦官(主に中華)を扱った創作物色々

全国200万人の宦官ファンの皆さん、こんにちは!
(※数字は適当です)

この弱小ブログへどれだけの宦官好きさんが来ておられるか不明ですが(´∀`;)好き勝手絶頂で行かせていただきます。

 

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星野作品としてはまあまあ

今月末、星野 之宣先生の『海帝』8巻が発売!と知り、思わず積んでいた7巻を読んでいます。これは、中国は明代の永楽帝の命を受けて、計7度の大航海の指揮をとった伝説的な存在である宦官、鄭和が主人公の歴史ロマンです。

ja.wikipedia.org


そして、来月は、青木 朋先生北宋の時代の中国を描く『天上恋歌』3巻発売!ということで、私が今まで読んだ宦官(主に中華)を扱った漫画・小説をつらつらとご紹介します。『キングダム』や『蒼天航路』は取りあえず抜きで。

 

【目次】

 

宦官について

宦官については、以下のリンクをどうぞ。

宦官 - Wikipedia

宦官とは本当に邪悪な存在か

こちらのページのように、宦官は権力の中枢に侍り、暴虐を尽くす、国を傾けるマイナスなイメージが少なくありません。

bushoojapan.com

 

史書に残されるような大物は、どうしても権力の中枢に近く皇帝(政治)に影響を及ぼす存在なので、「悪い」印象が強くなるでしょう。性器を切除された(この時点で当時では一人前の人間(男性)ではなくなっている)異形の存在であるということで、まともに見られなかったということもあります。

が、沢山いた宦官たちの大半は皇帝一家に直接御目通りも敵わなかったようです。そして、人間に色々な人がいるように、実際は宦官でも色々な人―極悪人や凄くいい人、狡い人、清廉な人、素朴な人―がいたのではないかと思います。

 

士大夫の価値観

中国には、士大夫(したいふ)という官僚・知識人階級がいました。
士大夫とは、wikipediaによれば「中国の北宋以降で、科挙官僚・地主・文人三者を兼ね備えた者」と定義されていますが、実際はもっと古い時代からそのような人達は存在していました。

史記』を記した司馬遷も、宮刑(性器を切除されて宦官にされる)前は、士大夫にあたる階級だったと言って良いでしょう。今に伝わる中華の歴史書を記したのは、この士大夫階級の歴史家達(皆男性)です。


祖先崇拝を重視する儒教の価値観を持った士大夫達からは、一人前の人間(男性)ではなくなり、子孫を残せない宦官は、それ自体が不孝、許しがたい存在です。そこまでして生きようとするなんて恥知らずでしかない。宦官は、宮廷においては結局、皇帝一族に仕える奴隷なのですよ。後代では、重用されて、宮廷の要職につくことも多くなってきますが、それが士大夫から見て面白い訳がない。だから、従来の史書に記された宦官についての記録は、その士大夫からのフィルターを通して書かれていると考えるべきだと思います。

 

宦官が出てくる作品

『天空の玉座』青木 朋 著

そんな宦官のイメージの流布を覆そうと描かれたのが、青木朋先生の少女漫画、『天空の玉座』でした。

 

天空の玉座 1 (ボニータ・コミックス)

天空の玉座 1 (ボニータ・コミックス)

 

 

この話は、中華ものの傑作で、大変お勧めです。中国の明の時代をモデルにしている架空の王朝を舞台にした、貴種流離譚の一種であり、中国歴代王朝の事件や様々な民族、ファッション等の文化のエッセンスが盛り込まれて、本当に面白い。

ヒロインの珊瑚が元気いっぱいな主人公キャラで、綿密に描き込まれた衣装やアクセサリー、建築、アロマ、食、行事等を堪能出来てうっとりしますが、宮中という権力の中枢にいるので、容赦なく人が死にます。それもかなりの主要人物達が。

紫禁城と美しい宦官を描きたいというご自分の萌えが執筆のきっかけだそうですが(笑)、ヒロインの兄である冷徹で苛烈な美貌の宦官、蓬莱(祥君)を始めとして、様々なルーツ・過去を持つ宦官達が生き生きと描かれます。

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この人物が蓬莱

特に蓬莱の造形は、筆者の思い入れがあるせいか、大変悲劇的で切ないものがあります(本人悪いことも沢山していますが)。彼は、元々宮中で大きな勢力を持っていた姫(き)一族の御曹司で、士大夫として育てられていました。それなのに育った価値観では卑しい、恥ずべき存在である宦官にされてしまった、その上あんなことになって…と非常に屈折したキャラクターとなっています。

この漫画、とても充実した内容と容赦ない展開で読み応えあったのですが、残念なのは、打ち切りっぽくて最後が駆け足なところ(泣)。『天上恋歌』は頑張って、青木先生が描かれたいところまで続けて欲しいです!

 

天は赤い河のほとり』篠原 千絵 著

篠原千絵先生と言えば、私には『闇のパープル・アイ』なのですが、これは古代ヒッタイトへ現代人の日本人の女の子がタイムスリップして…という少女漫画です。『王家の紋章』のパクリ?と言われることもあるけれど、こちらはちゃんと完結したからずうぅぅぅっと偉いと思います。

 

実は、一部しか読んでいません(汗)

本作を取り上げたのは、ヒロイン達の大敵・ナキア皇太后に仕えるウルヒ・シャルマという宦官が出てくるから。金髪碧眼の美形宦官です。この話、ウルヒが「宦官にされる」シーンまでご丁寧にあるんですよ!『天空の玉座』といい、少女漫画って…(;´Д`)

 

輝夜姫』清水 玲子 著

非常に精緻で美しい絵と、冷徹無比なストーリー展開で知られる清水先生の作品です。(色々と文句はありますが;)

 

輝夜姫 1 (白泉社文庫)

輝夜姫 1 (白泉社文庫)

 

 これは、宦官ではないのですが、「高力士」というキャラクターがでてきます。中国の李財閥の後継者、李玉鈴という超お嬢様(高慢な絶世の美女)のボディ・ガードである髭の濃いむくつけき巨漢なのですが、今思うとかなりおかしな設定(笑)

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右側の男性が高力士

「高力士」と言えば、唐の玄宗皇帝の腹心で、楊貴妃を縊り殺したあの有名な宦官からとった名前でしょう。が、こんな命名はないのでは?髭が生えているのに。昔の中国では、男は髭を生やしているのが当たり前で、(宦官という文化があったため)正常な男の証として、権威を示すためにそうしていたという説があります。それを考えるとこのキャラクターは何なの?と思います。

この話、李財閥の設定とかもツッコミどころありまくりで、中国共産党が知ったらどうなるんだろうと思います(笑) 作画とか、素晴らしいところもある作品ですけどね…

 

『SARU』五十嵐 大介 著

神絵師であり、摩訶不思議で魅力的なストーリーを紡がれる漫画家、五十嵐大介先生の上下巻の漫画、『SARU』は凄い作品です。あれだけ大きく広げた風呂敷を、たった2巻できちんと畳んでしまう。

 

SARU 上 (IKKI COMIX)

SARU 上 (IKKI COMIX)

 

 これにも、ちらりとですが、宦官が出てきます。中国明代の、あの悪名高い魏 忠賢ですよ!秘密警察の東廠の長官となり、民衆に自分を「九千歳」と讃えさせた(「万歳」は皇帝相手にのみ使うものなので、千歳減らして)アイツです。著者が忠賢に「イエズス会」とか言わせているのがまたたまりません(本作はイエズス会も絡む話なのです)。

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↑こいつが魏 忠賢

 

『双子幻綺行 洛陽城推理譚』森福 都 著

これはミステリ短編集(小説)です。

 

双子幻綺行―洛陽城推理譚

双子幻綺行―洛陽城推理譚

  • 作者:森福 都
  • 発売日: 2001/02/01
  • メディア: 単行本
 

 


国史上唯一の女帝となった武則天に仕える若き宦官と女官の美貌の双子が、都で起こる怪事件を時に推理、時に捜査して解決したりそうでなかったりする連作短編集で、中々面白いです。

この武則天という人物も、一般の士大夫の価値観からしたら非常に許しがたい存在(女が我が子も手にかけて、王朝を簒奪して皇帝に登りつめる!!とか)だったようで、以前はマイナスな評価ばかりだったようです。

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現在は、政治的手腕等再評価が進んでいるようです。かな~り悪いことも一杯していたようですが、同じようなことは男の権力者だっていくらでもしていたでしょうし。

『双子幻綺行』の話に戻りますが、最後まで読むと、史実の人物を色々と調べたくなりますよ♪著者の手腕に脱帽です。

 

安徳天皇漂海記』及び『廃帝綺譚』宇月原 晴明 著

2006年に第十九回山本周五郎賞を受賞した宇月原 晴明先生の傑作伝奇時代小説、『安徳天皇漂海記』はどことなく、澁澤龍彦の『高丘親王航海記』を思わせる作品です。

 

安徳天皇漂海記 (中公文庫)

安徳天皇漂海記 (中公文庫)

 

 

源実朝とか、マルコ・ポーロとか出てきて、凄く面白い。この小説の第2部にて、南栄最後の幼年皇帝、趙昺(祥興帝)に仕える武闘派宦官が出てきます。今本が手元にないので名前は忘れましたが、当然、こういう戦場にて皇帝に付き従う宦官もいたでしょうね。

ja.wikipedia.org


この作品が、私にとって「戦う宦官」に出会った最初かと思います。しかし、この小説、本当に切なくて泣けるのです。でも、それは心洗われる涙。

 

同じ宇月原先生の『廃帝綺譚』は、『安徳天皇漂海記』からのスピンオフ的な、同一世界での連作小説集です。

 

廃帝綺譚 (中公文庫)

廃帝綺譚 (中公文庫)

 

 

4つの物語でそれぞれ「廃帝」が描かれますが、2番目の『南海彷徨』にて、明の永楽帝に仕える鄭和が出てきます!これも武闘派宦官。(この話での「永楽帝と仲が良い鄭和」のイメージが強くて、星野先生の『海帝』には文句を言いたくなってしまうのですよね(;´∀`))
続く3作目『禁城落陽』は明朝の最後の皇帝・崇禎帝が主人公ですが、その皇帝に、最後まで仕えて運命を共にする王承恩という宦官が出てきます(実在の人物)。ね?宦官でも色々な人がいたのです。

本作は、宇月原先生の腐男子ぶりが相変わらず。か弱い少年に萌えながら書いているなあと思いつつ、読めました。

 

再び、星野 之宣先生の『海帝』について

で、『海帝』7巻をざっと読みました。

 

海帝(7) (ビッグコミックススペシャル)

海帝(7) (ビッグコミックススペシャル)

 

NHKの『浦沢直樹の漫勉neo』でその執筆風景が紹介されていたまさにその部分の掲載内容でしたから、その意味でも感慨深いです。番組放映時は、海や山の風景や、人物(色んな角度からの!)を、あのリアルな筆致で資料も無しに、どんどん描いていかれる様子に驚嘆して視聴していましたが、本当に素晴らしい絵師様です。

 

しかし…この巻読んでいてまず思ったのは、「みんな鄭和様のこと好き過ぎ!」という点です(笑)

もう、鄭和艦隊は、「鄭和様親衛隊」というか、「鄭和様を見守り隊」と化しています。人外にも鄭和、モテているし。大鮫魚(だいこうぎょ=サメ)も鄭和のストーカー(笑)

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鄭和艦隊を追っかける大鮫魚w

永遠の敵の筈だった永楽帝も、鄭和相手だとなんだかかわいくなっちゃっているしwww みんなおかしーよ!という気持ちです。

『海帝』については、一度これまでの巻をまとめてレビューしたいと思っていましたが、どうしましょう…


それではまた! 

『車輪の下』ヘルマン・ヘッセ 著 感想

ゴールデンウイークも終わりです。掃除や、へっぽこガーデニングやオンライン飲み会もでき、グータラ出来た良い連休でした。

さて、ヘルマン・ヘッセ の小説、『車輪の下』の感想です。読書会の課題本だったので読みました。

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図書館で借りました

 

車輪の下(新潮文庫)

車輪の下(新潮文庫)

 

※注:盛大にネタバレしています
評価:★★★★☆(5つ★満点))

 

【目次】

 

概要

ドイツが産んだノーベル賞作家、ヘルマン・ヘッセの代表的自伝小説。マウルブロンの神学校での寄宿舎生活は、著者の実人生を元に描かれています。

 

あらすじ

ドイツ、シュワルツワルトの小さな町に生まれた"神童"、ハンス・ギーベンラートは、幼少時から周囲の人々からの期待を背負い、子供らしい遊びからも遠ざけられてガリ勉生活にあけくれていました。

結果、国家のエリート養成機関であるマウルブロンの神学校に2位の成績で合格します。が、詩人の心を持つ奔放な級友、ヘルマン・ハイルナーとの出会いがきっかけで、今までの勉強一辺倒の人生に疑問を持つようようになってしまいます。

勉強へのモチベーションが下がり、親友ハイルナーの退学と、校内で孤立が進み、成績がガタ落ちのハンス。精神を病み、とうとう彼も退学になります。

失意の中帰郷して、エンマとの儚い恋(失恋)を経験後、周回遅れで機械工の徒弟として再出発するハンス。働き初めの飲み会で、飲み過ぎてしまい酔いつぶれた挙句に溺死します(事故か自殺か不明)。

 

感想

子供にこんなもの読ませるな

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勉強し過ぎは毒だ、と訴える課題図書(矛盾)

あの…こんな小説を何故ヘッセが書いたのかさっぱり分かりません(;´∀`)
死亡エンドは知っていましたが(有名な小説ですから)、それでも読んでガックシ、しおしおのぱあですよ。一貫して全くカタルシス無し。

そう、この小説、ドイツより日本の方がずっと読まれているそうです。しかも、読書感想文とかの課題図書になっていたりするそうですが。決めた人は何を考えているんだか。受験戦争にさらされる思春期の子供にこんなガリ勉ライフを徹底して批判している小説を読ませてどうするんですか。これ、大学合格以降にこそ読ませるべきですよ。

本書は全編にわたって、大人達に勉学を強制される生き方への皮肉と批判に満ちています。でもそこから外れてどうなるのか。どの道生きることは闘いだし、楽ではありません。ヘッセは奇跡的に作家として成功しましたが、滅多にない例ですよ。

受験生の時期は、ハンスのように勉強に明け暮れるべき(学問が向いていなくても何か将来の仕事につながる勉強は必要)だし、そして合格して初めてハイルナー的生き方を知れば良い、そう思います。本当にハイルナーのように生きなくても、あくせく勉強やら仕事やらしながら、心の中にこっそりハイルナーを飼えば良いのです。

 

作者ひどくね?

ヘッセが自らを二人の登場人物、ハンスとヘルマン・ハイルナーに投影したのだろうとは読んでいて感じました。ハイルナーは生き延びて作家となった自分なのは分かりますが、もう一人の自己―ハンス―をあんなに転落させて、殺してしまう意図がやっぱり分かりません。

後半の、以下の展開…

エリートコースからドロップアウト(退学)

帰郷してぶらぶらしている時にエンマとちょっとエロイことになる
(少年時代からの完全な訣別)

エンマとの別離(フラれた)

ブルーカラーとして再出発

アルハラで死亡

……この展開、酷くないですか?(;´д`)トホホ…

 

小説において、作者は受験戦争の過酷さを批判します。そしてハンスがドロップアウトしてしまってから、自殺を何度も考えたと描写しながら、死なせません。その後、恋の経験で子供時代に別れを告げさせ、彼が今まで見下していたブルーカラーの仕事に身を投じることで、大人への成長を促したのかと思っていたら…

ハンスはそのような人達の生活も"悪くないじゃないか"と確かに見直していたんですよ。でも、そこから人生を切り開いていくことを、作者は許さなかった。そこが分かりません。

 

能力が発揮できない辛さ

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学問の楽しさは確かにある

素質があっても、その能力を開花させることができるとは限らないのだなあと痛感しました。お勉強ができるだけじゃダメなんですよね。世間知や、ある種のたくましさもないと。その悲劇も描かれていると思います。

 

自然描写は美しかった

こんなにくさしていて星4つなのは、作中に折々描かれる、自然描写―季節の推移や動植物を描く文章―が美しかったからです。特に、彼が遠ざけられ、訣別せざるを得なかった自然のままの子供時代に直結する描写がとても美しい。原文は分かりませんが、高橋健二さんの訳文が良いからでしょうね。

例えば、神学校に入学後の春の描写。


春の初めだった。美しい丸みを帯びた丘に、浅い明るい波のように、もえる緑が流れた。木々は、輪郭の鋭い褐色の網目のような冬姿をぬぎ捨て、若葉の戯れや野山の色と溶けあい、生き生きとした緑のはてしない波と化した。

(『車輪の下ヘルマン・ヘッセ著 高橋 健二訳(新潮文庫)より引用)

 

釣の描写も生き生きしていて、ヘッセ自身も(少なくとも幼少期は)釣に明け暮れたと思わされます。

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バッタが餌だそうです


…でも、話が進んで、ハンスの心がボキボキ折れていくのに、相変わらず自然描写が(怖いくらい)美しく綴られるのが、辛くなって「もうやめたげて(´;ω;`)」という気分になります。

 

ちょっとBL描写? 

男子ばかりの寄宿舎で、男同士のキスシーンなんてあり、「BL!?」と思ってしまいました(笑) こちらが勝手に反応しているだけですが…

 

ヘルマン・ヘッセについて

私は、ヘッセの著作は教科書に掲載されていた『少年の日の思い出』と、『デミアン』、『メルヒェン』、『地獄は克服できる』が既読です。『少年の日の思い出』もキツい話でしたが、本作もなかなかいい線行っています。

車輪の下』の神学校のモデルとなるマウルブロン修道院は、写真で見て、建築の美しさが印象に残っています。

↓公式サイト

 

www.kloster-maulbronn.de

 

それでは!連休明けの方が多いでしょうが、頑張りましょう。